2006年度 アイドルトーク 02

 

2 「将来のために・・・

虫歯や歯周病で歯を失ったときのために、自分の健康な歯を預けておく「ティースバンク(歯の銀行)」が広島大学にあるそうです。「広大病院でも、矯正治療などで抜いた歯を年間5500本ほど捨てていた。患者さんからも、まだ健全な歯を抜いて捨てるのはもったいないという声が上がり、何とか捨てないで保存して、将来、歯を抜いた時に自分の歯を移植できないかと考えた」と、広島大学矯正歯科講師の河田俊嗣さんは話されています。

ただ、抜いた歯をもう一度別の歯が抜けた場所に移植するには、歯の根っこのまわりにある「歯根膜」を乾燥させずに保存することが必要でした。河田さんたちは、歯根膜がついた歯に磁場をかけながら冷凍し、長期間保存できる技術を開発されました。これは従来の冷凍システムとは異なる新しい凍結技術で、凍結しても細胞が破壊されず、解凍後も鮮度が“生き生き”と蘇るのだそうです。将来、歯を失って移植する時は、ティースバンクから搬送された歯を解凍し、抜けた場所に植え、糸で固定します。1年ほどすると歯があごに固定され、噛めるようにな

るそうです。

ところで、奈良女子大学教授の浜田寿美男さんは「将来」や「明日」という観念は人間の豊かさを支えると同時に、根源的な不安の源でもあると述べられています。わたしたちは、「明日」を明るく確かなものとして考えられれば、今日は豊かなものになるし、反対に、「将来」が不確実なものだと思えば今日は不安で苦しい1日となってしまいます。現代の子どもたちは自分の「明日」や「将来」をどのようにイメージしているのでしょうか。また、浜田さんは「将来のために」と学校で学ぶことの多くが、子どもたちの現実のくらしと直接結びつかず、そのことが子どもの心を不安定なものにしていると指摘されています。

今日学ぶことが、子どもの「今」のくらしに、あるいは「明日」の生活に確かにつながることを、人権教育の取組においては実感させたいと思います。人権教育は、子どもの未来を豊かにすると同時に、子どもたちの「今」を大切にすることが求められます。

さて、前述のティースバンクで保存できる歯は一人8本までで、なんと最長40年も保存できるそうです。将来のために・・・、どうでしょうか。