2006年度 アイドルトーク 02

 

9月号 「自分で考える

女子バレーボールワールドグランプリの試合を見ていると、今までと少し違うことに気がつきました。選手のユニフォームの背中に書かれた「名前」です。大山選手には「KANA」、菅山選手には「KAORU」と書かれています。今年から、姓ではなく名前を書くようになったのかと思って他の選手を見ていると、「TAKESHITA」「SUGIYAMA」という文字が見えます。姓名のどちらかを選べるようになったのかと思いましたが、高橋選手は「SHIN」、宝来選手には「MAHO」と表記されていて、どうもそうではないようです。

全日本チームの荒木田団長によると、「名字が同じ選手が何人かいる場合、これまではファーストネームのイニシャルを入れていた。でも、高橋の場合、みゆきも翠もMになってしまう。そこで、みゆきはニックネームの『SHIN』、そしてもうひとりの高橋は『MIDORI』とした。それがきっかけで、すべての選手がユニフォームの表示を自由に選べるようにした。」そうです。

自分のアイデンティティの基ともいえる名前の表記を、自分で考え、自分で選び、決められるのはよいことだと思いました。

ところで、沖縄戦で10万人の日本軍を指揮したとされる牛島満陸軍中将の孫に当たる牛島貞満さんは、'94年に初めて沖縄を訪れ、摩文仁の旧平和祈念資料館に展示されていた「最後まで敢闘し、生きて虜囚の辱めを受くることなく、悠久の大義に生くべし」という祖父の最後の命令と、この命令で多くの人が命を落としたという解説に衝撃を受けたそうです。「『子ども好きのいい人だった』祖父を知る人々の話と、多大な犠牲を強いる命令を出した司令官の姿。調べるほど、二つの像はずれていった。(略)教育がそうさせたと思うだけに、国を愛せよと取り立てて教えることには強い危惧がある。牛島さんは思う。『愛する相手は強要されるものではなく、おとなの姿を見て子どもが考えるものだ』」 (朝日新聞6月25日付)

さて、ワールドグランプリ。接戦の場面になると、テレビから聞こえる「ニッポン」「ニッポン」の声に引き込まれ、日本チームを応援しています。でも、これは、強要された「愛国心」とは違うように思います。何を好きになるか、誰を大事に思うのか、子どもたちにも「自分で考え、自分で選び、自分で決められる」力をつけることと同時に、そうしたことが認められる社会を継承していきたいものだと思います。