2009年度 アイドルトーク 02

 

6月号 「『待つ』ということ

定例の家庭訪問に出かけたときのことです。ある保護者から「どうしたら子どもは自分から進んで何でもやるようになるんでしょうか」と質問されました。みなさんはなんと答えますか?私はとっさに「自分からするまで『待つこと』以外ないんじゃないでしょうか」と答えました。

今の時代は待たなくてもいい時代になったとよく言われます。携帯電話が普及し、待ち合わせに遅れそうになってもすぐに連絡を取ることができ、何時間も待たせたり、待ったりすることはありません。手紙や書類などは切手を貼って投函することなく、メールで瞬時に届けたり、受けとったりすることができます。また、子どもたちが持っている携帯ゲームにおいても、うまくいかなかったり、何かトラブルが起こったりするとリセットすればまた同じ所から始めることかできます。

世の中が便利になり、『待つこと』が少なくなり、いつしかすべてにおいて速さを求めるようになってしまってはいないでしょうか。「何でも早くすることが当たり前」と心の余裕もなくなってきたように思います。

社会体育の活動中にもこんなことがありました。試合会場で落とし物があり、「これ誰の?」と聞いてもなかなか持ち主は現れてくれません。名前が書いてあったので、当の本人に「これ君のやろ?」といってもまだ首をかしげています。よく聞いてみると自分が準備をする前に、親がしてくれたので中に何が入っているのか分からないとのことでした。

また、授業中、なかなか手が挙がらず、沈黙の時間を避けたくて席の順番にあてることもよくあることでしょう。
待てなくなったのは子どもではなく、実は、私たちおとななのではないでしょうか。

私たちおとなは「子どもたちが失敗しないように」、「子どもが恥ずかしい思いをしないように」と『配慮』していることが多くありますが、時にはじっくり待つこともとても大切なことだと思います。学校・園・所においても毎日が忙しく、教師が「お膳立て」したものを子どもが実行するだけになっていないでしょうか。

世の中には、速さを求めてはいけないもの、じっくりと時間をかけなければならないものもたくさんあります、「子どもの成長」はその最たるものだと思います。