2010年度 あいどるとおく

 

5月号 「時の重みを感じて

本欄がスタートしたのは00年6月。当時はまだ奈良県同和教育研究会(奈同教)であり、「などちゃんのアイドルトーク」という名称でのスタートでした。

あれから10年。コーナー名は「アイドルトークⅡ」と変わりました。しかし、身のまわりの様々な出来事に「人権」というものさしをあててみようというスタイルは今も変わりません。

さて、私事で恐縮ですが、現在この原稿を執筆中の私は、10年前この新聞の編集に携わっておりました。その後、一会員として「アイドルトーク」を読むのを楽しみにしていたのに、まさか自分が執筆することになるとは……。時の流れと引き継ぐことの重みを感じます。

ところで、そんな私が生まれた63年5月、埼玉県狭山市で高校1年生の少女が誘拐・殺害されました。その容疑者として、被差別部落出身の石川一雄さん(当時24歳)が逮捕・起訴され、刑事裁判に掛けられました。石川さんは一審の死刑判決後に冤罪を主張。その後、無期懲役が確定し、石川さんは服役。94年に仮釈放され現在に至ります。

いわゆる「狭山事件」ですが、先日、東京高検は、石川さんが「自白」した捜査段階の取り調べ録音テープなど36 点の証拠を開示しました。弁護団はこれらを検討し、新証拠として高裁に提出したり、追加の開示請求を行う方針だそうです。石川さんは「まだ隠している証拠があるはず。一日も早く事実調べをして再審開始決定を出してほしい」と話されました。47年間閉ざされたままの真実が明らかにされることが望まれます。それにしても、47年という時間はあまりにも重すぎます。47年は私の人生と同じ長さなのですから……。

今後このような悲劇が二度と起こらぬよう、確かなものの見方を身につけたいと思います。そして、豊かな人権感覚を持つ人を育てたいと思います。

「人権文化の確立」とは、そういうことではないでしょうか。※ 本コーナーは、これまでのすべてを継承し、新たなステージを創造するという決意を込め、「あいどるとおく」と改称します。