2013年度 あいどるとおく

 

12月号 「正義って何だろう?

 みなさん、ワンピースと いう漫画を御存知でしょうか。単行本の累計部数が三億冊を超え、十年以上もアニメ放送が続いている作品なので、知っている方も多いと思うのですが、簡単 に説明すると、主人公のルフィーという青年が、なかまとともに冒険をしながら、海賊王をめざすというお話です。主人公が海賊ですが、ただ単に海賊行為を 描いているのではなく、なかまとの絆を感じさせる場面があったり、心に残る言葉と出合えたりするのが、その魅力の一つなのではないかと思っています。

 実は私この漫画が大好きで、学校でもそのことを知っている子がたくさんいて、時々子どもたちとキャラクターの話をしたり、ストーリー展開を予想したりしています。

 ある日のこと、何人かの子とワンピースの話をしていると、一人の子が「先生、でも、ルフィーって海賊やんな。海賊って悪いんちゃうん。」と言ったのです。

 確かに、船舶や沿岸地域を襲撃し、金品や食料を強奪する海賊行為は、許されることではありません。そう考えると、その子の言った「海賊って悪いんちゃう ん」という言葉は、まさにその通りだと思い、「そう言われたらそうやなあ。」と曖昧な返事をしていました。すると、続けて別の子が、「じゃあ、海軍は海賊 からみんなを守るから、いいもんなんかな?」と言いました。

 子どもたちとこんな話をした後、私はあることを考えていました。ワンピースには海軍も出てきて、海賊から人々を守る場面もありますが、卑怯な手段で海賊をだましたり、ある国の人々を虐殺したりもしていて、必ずしも「いいもん」とは言えない描かれ方をしています。ところが、そんな海軍が着ているコートの背中には、 「正義」という文字が書かれているのです。その「正義」という文字を思い浮かべながら、「卑怯な手段で海賊をだます行為も、ある国の人々を虐殺する行為も、正義のために行われているということなのか?

 正義のためなら許されるの か?」と考えていると、「正義っていったい何なんだろう?」と思ってしまいました。現実の世界の歴史を振り返っても、正義の名の下に、どれ程の戦争が行われたでしょうか。また、今現在私たちを取り巻く社会を見ても、正義の名の下に、私たちの人権を脅かす動きがないでしょうか。ある立場の人から見た正義は、別の立場の人から見ると正義ではありません。「その正義は誰か特定の人に都合の良い正義ではないのか。」 「その正義ですべての人が幸せになるのか。」そして、「正義っていったい何なんだろうか。」知らず知らずのうちにとんでもない方向に流されてしまわないよう に、一人一人がきちんと物を見、考えていく必要があると思います