事業報告

第60回奈良人権教育研究大会 報告等の概要

第1分科会 教育内容の創造と学習活動

第1分散会

「うち、工場やってるで」 ~私たちの町の靴産業~

大和郡山市立片桐西小学校旧4年学年集団 茶谷 優太(現三郷町立三郷北小学校)

子どもたちは、社会科で自分たちの町の靴産業が郡山を代表する産業の一つであり、国内だけでなく、世界にまで知られていることを学んだ。
そして、身近な人たちが靴作りに携わっていることを知る。
しかし、どうして靴産業が盛んになったのか、子どもたちは知らない。
いずれ知るであろう地域のことについて、学習を進めた

「なき声以外は、ムダにしない」~牛を知ろう、和太鼓から肉の学習へ~

宇陀市立室生西小学校 畑山 明美・米山 美千代

運動会の応援で使用した和太鼓を入り口として、「和太鼓作り」の学習を始めた。
そこから、牛を材料にして作られる靴やグローブ、肉の学習へとつなげていった。
菟田野の「毛皮革工場」の見学では、いろいろな工夫があることを知った。
一連の学習から、子どもたちがつかんだこと、感じたことなどを報告する。

「大切な命」~いろいろなものへの感謝~

大和高田市立浮孔幼稚園 職員集団 上原 佳代子

複雑な家庭事情が増えつつある中で、自分が愛され育っていることに気付く体験や、自然・動物とのふれ合いを通して、今ここにいるのは、家族を含め多くの人の支えがあり、たくさんの「いのち」をいただいて生きていることを感じてほしい。
さらに、自分を大切にし、まわりの命あるものを大事にする子どもに育つことを願い取り組んだ。

第2分散会

平和のバトンを受けついで ~見つめよう自分、そしてなかま~

大和高田市立土庫小学校 北野井 雅良

個性的な子どもたちが多くいるクラスを、5年生、6年生と2年間担任しました。
1年生から1クラスという中で、最高学年になり、個々や集団の変化が様々見られるようになってきました。
特に平和学習を通して、自分やクラスを見つめ直していった取組を中心に報告したいと考えています。

いのちとは」「生きるとは」 子どもとともに学んだこと ~総合的な学習の時間・道徳の取り組みから~

葛城市立新庄小学校 旧3学年集団 石田 克也・辻井 知里・喜多 宏仁

今、子どもたちを取り巻く社会情勢は大変不安な気持ちをもたざるを得ないと思います。

新聞やテレビでは、毎日のように「いのち」に関わる出来事が報道されています。
「いのちとは」「生きるとは」をテーマに、総合的な学習の時間や道徳を中心に取り組んだことと、そこから教師自身が学んだことを報告します。

健康でたくましい心と体をつくり生き生きと活動できる仲間づくりをめざして

五條市立五條幼稚園 吉井 育美

幼児が興味を抱きながら楽しく運動するため、それぞれの活動の特質を生かしながら夢中になって遊べる環境を見直し、色々な遊びを経験することから体を動かす心地よさや楽しさを感じられるよう取り組んできました。
異年齢児が交流する中で思いやりやいたわりの気持ちがはぐくまれ、遊びが深まり仲間意識や競争意識が高まりつつある様子を報告します。

第2分科会 学力保障と授業改革

「識字学習」を通した生徒たちの成長

大和郡山市立片桐中学校 松浦 功志・大西 康太

生徒たちは字が読めないことによって被る不利益や、困難を知り、文字を学ぶことの大切さを知った。
生徒たちに有志を募り、天理北夜間中学校への訪問を行った。
夜間中学の方と交流することにより読み書きできることはとても大切なものであることを知った。
このような学習を通した生徒たちの変化と課題などを報告します。

畝傍夜中の役割と課題 ~新渡日生徒の実態から~橿原市立畝傍中学校夜間学級

林 青

外国にルーツを持つ新渡日生徒にとって、日本での生活に必要な力をいかに身につけるかは緊急の課題である。
学校教育活動の中で、生きる力の養成にどう取り組むか、学力保障と進路をどうつないでいくのか、夜間中学は今「新渡日生徒の自立・自己実現を支援しうるかどうか」が問われているのである。

「お前は大丈夫!」 ~Aと歩んできた道を振り返って~

御所市立御所中学校 藤原 慎

何かと問題行動が多いA。
こちらが立場でものを言っているのを見透かされ、傷つけたこともあった。
何をしても思いが届かず、心が折れたこともあった。
しかし、彼との関わりの中で、少しずつ背景にあるしんどさが見え、必死にもがいていく中で彼とのつながりが強くなっていった。
そんなAとの3年間を振り返り、様々な変化を報告したい。

保健室からタワーのてっぺんへ

香芝市立五位堂小学校 奥中 洋史

2~4年生まで保健室登校を続けていたAさんと出会い、学級担任として5、6年生と2年間をともに過ごしました。
Aさんは、家族やなかまに支えられ、教室に自分の居場所を見つけていきます。
卒業が近づくにつれ、学級や学年の行事にも自ら参加するようになりました。
Aさんの成長の様子を支援や取組を交えて報告させていただきます。

第3分科会 自立と共生をめざす集団づくり

第1分散会

笑顔いっぱい咲きますように! ~A児との日々の中で~

大和郡山市立矢田南幼稚園 植田 ゆかり

3年保育年中児で入園してきたA児にとって、初めての幼稚園は落ち着かず不安がいっぱいの場所であった。
そんなA児と29名の子どもたちが日々、様々な出来事やぶつかり合いを通し、互いに育ち合い、輝く笑顔をいっぱい咲かせられるようにと願い、悩み、躓き、立ち止まりながら歩んできた2年間の取組について報告する。

いっしょにしたいかなと思って ~共にすごし、わかり合える学級をめざして~

天理市立前栽小学校 西辻 雅代

1学年5クラスという大人数の前栽小学校では、3年生になって初めて同じクラスになる子も少なくない。
ある子が「しょうがい」をもつ友だちにかけた一言から、もっとクラスの子がわかり合い、つながらなければならないと考え、取り組んだこと、その中で子どもたちの姿から学んだことを報告したい。

すごいね!!タッチ!!

下北山村立下北山小学校子 中西 由美

7人という小さな集団で はあるが、実に個性豊かで ある。そんな7人の中に、 特別支援学級に籍を置くA さんもいる。7人は保育所 のころからずっと一緒に 育ってきた。できること、 できないこと、好きなこと、 嫌なこと、ほとんどを既に 共有しているが・・・。そん な1年生が互いの思いを共 有し、共に成長していく姿 を報告する。

第2分散会

互いの良さや違いを認め合う子どもたちに

大和郡山市立筒井幼稚園 坪井 美稚子・辻本 奈穂

3歳児では幼児の不安や思いを丸ごと受け止めながら初めての集団生活が安心して過ごせるよう保育を工 夫している。4歳・5歳児では、様々な人との出会いや経験を通して視野を広げ自尊感情を高めながら、友達のことも自分のこととして受け止められるようにと願い保育をしている。そんな3年間の取組を発表したい。

「おーい! みんな!!」
~ 「つながり」を大事にする学年を目指して~

大和高田市立陵西小学校 松田 敦志・西口 博美・永長由利子

昨年度4年生96名は「つながり」を学年目標とした。4年生として自分からつながりをもつことはどういうことかを出発点として、「自己探検」をしていく中で、学年としてまとまっていくことを目ざした。その中で、つながりきれずに身勝手な行動をしてしまうAさんとまわりの子どもたちの「こころ」の変化、さらにこの子たちと関わった我々教員自身の「自己探検」に焦点をあてて報告する。

『ニコイチ!』~ほめる学級経営~

五條市立北宇智小学校 香井 浄宏

子どもたちはみんなほめ られたくて、しかられたくはない。この2つの思いは子どもたちにとって大きなものであり、あらゆる活動に影響していくと考えた。そこで、「ほめるために」と「しからなくてもいいように」という2つの視点をもって取組を進めていった。学級全体が「ニコイチ」の関係となれるように。

第3分散会

「ともだちって いいな」

大和郡山市立新町保育園 成松 幸夫

進級当初、いつも男女に分かれて別々に遊んでいた年長児の子ども達。自信が持てずに友達の遊びに入れなかったり、自分の思いを表現しにくかったりという姿もあった。集団遊びを多く取り入れ、いろいろな遊びに挑戦していく中で、自分の思いを出し、友達と認め合いながら一緒に遊べるようになっていった姿を報告したい。

互いに認め合える学級を目指して

生駒市立生駒小学校 大野 直彬・伊勢木崇宏

学校教育は、「学力問題」「不登校」「いじめ」等、様々な問題を抱えています。生駒小学校では、これらの問題を教育の様々な領域が連携して解決すべき問題と捉え、それに至る道筋はどのようなものか探ってきました。今回は、学級でのなかま集団づくり(Aさんを核に据えたなかまづくり)の実践事例を報告させていただきます。

先生、俺最近頑張ってんで!

御所市立掖上小学校 西浦 大河

様々な課題を抱えるA児。出会った頃は関わり方がわからず悩んでいたが、自分だけが関わっているのではないことに気づく。掖上小学校の教師集団、周りの子どもたち、家庭、そして自分。周りに認められながら自信をつけていき、少しずつ成長していくA児。そんなA児とともに過ごした3年間を報告したい。

第4分散会

自分も人も大切にできる豊かな仲間づくり

大和郡山市立郡山南小学校 旧5年学年集団 川村 早苗・石田 孝子・梅谷 健二

自分の思いをうまく伝えられない子や相手を思いやることができない子が多い五年生。そこで、自分のよいところを知り、上手に自己主張する方法を身につけるアサーショントレーニングなどのスキルを行った。また、思いやりをもって、人と接することができるように、幼稚園との交流の機会をもった。これらを通した取組を報告する。

「友達っていいね」~自分の良さ、友達の良さを感じられるクラスづくりを目指して~

田原本町立平野幼稚園 牧野 麻衣子

クラスでは友達同士、衝突は少ないが、自分の思いを伝えられなかったり、友達のことを気にかけずにいたりする姿がある。園の様々な場面で、友達と触れ合い、一人一人の良さを知っていく中で、友達を思いやる気持ちを育て、みんなで遊びや活動を進めていく楽しさを感じて欲しいと願って取り組んだ実践を報告する。

「触れ合ってつながろう」~みんなと一緒って楽しいね~

當麻第1保育所 石井 陽美・重本真由美(現 磐城第1保育所)

ほんわかタイムや自然探し等、異年齢児と一緒に多くの活動を重ね、友だちのしていることに目を向けたり、様子に気付いたりする中で、友だちを思う優しさや思いやり、憧れといった様々な思いが育ってほしいと願い、かかわりを大切にしてきました。異年齢児が共に生活し遊ぶ中で、一人ひとりが「みんなと一緒って楽しいね」と感じられるよう、取組を進めてきた内容について報告します。

第5分散会

「育ち合う学級づくり」~A君との関わり~

奈良市立都南中学校(現春日中学校)石山 雅之

様々な特徴を持つ生徒たちをお互いに高め合い、認め合える集団にしていくための学級活動を中心に発表したい。その中で育ち合う関係づくりとはどういうものかを共に考えてみたい。

「子ども本位」でつながる小中一貫へ ~子どもの成長に寄り添って~

御所市立葛小中学校 角谷 尚希・吉岡 勝也

一昨年度から続く差別事象やいじめ事象を契機に、根強く残る従来の小学校と中学校との考え方ややり方など、教員間のギャップを埋め、私たちはようやく「子ども本位」で連携する教育のあり方を共有することができた。本報告では、どのように小中の段差を埋めることができたのか、その考え方や取組について報告する。

「キラキラできる居場所づくりをめざして」

三郷町立三郷中学校 西尾 真理

担任をする中で、課題に直面した際のこどもたちの心の揺れや成長に出会うことができました。そのこどもたちの変化が、自分自身のこれまでの価値観や人権意識について振り返りの契機となり、人権に対する認識の甘さやなかまづくりの難しさを子どもたちに気付かされる毎日です。今回は学年で起きたAさんに対するいじめ事象への取組を中心に学級活動や道徳で感じたこどもたちの可能性について報告させて頂きます。

第6分散会

在日外国人問題学習て「多文化共生」の取組

香芝市立香芝東中学校 増田 尚弘

本校第一学年の中には、民族名を名乗りながら学校生活を送っている在日コリアンの生徒が3名います。その3名の生徒を中心に、さらには彼らの保護者の協力も得ながら、ともに考えともに推し進めた「多文化共生」の取組について報告いたします。

集中ホームルームから劇「小林水平社」へ ~子どもらを自立へと向かわせるもの~

御所市立大正中学校部落研 (部落解放研究会)指導者集団

体育大会と文化祭をあわせて3日間かけて行われる大中祭。本年度も部落研は文化祭で劇を演じた。この劇に至る子どもたちの姿、この劇で見せてくれた子どもたちの姿を通して、教師自身が多くのことを学んだ。またその学びは、これからの大正中教育の貴重な教訓、確かな指標を示すものになるだろう。Aの話を軸に、その中身をレポートしたい。

「人権を確かめあう日」の取り組みと人権教育HR

五條高等学校 福本 義乗

本校では、「人権を確かめあう日」の取り組みを年10回実施しており、毎回、人権に関わるプリントをSHRの時間に生徒が熟読し、家庭に持ち帰って家族にも読んでもらっている。一方、人権教育HRでは、視聴覚教材の使用やクラスでの班別討論といった取り組みを進めてきた。これらを中心に本校の人権教育を報告したい。

 

第5分科会 保幼小中高・地域の連携と教育力

相手を思いやる心情と実践力をはぐくむ「いのちの学習」
~治道認定こども園との連携を通して~

大和郡山市立治道小学校 吉村 裕子・笠松 沙織・片出 千尋

本校では、乳幼児が過ごす治道認定子ども園と連携を進めています。その取組みの一環として、体やいのちの大切さを学び、小さい子を思いやる心情と、小さい子に関わる実践力を身につけることをめあてに「いのちの学習」をしています。その中から、2・3年生が2歳児の園児と関わりながら学習した様子を報告します。

『何で、学校に行かんなんの。』

天理市立二階堂小学校 三宅 泰代

学校生活の基礎となることを身につける一年生。私が関わった二人の児童は、就学前から生活リズムの乱れから幼稚園・保育所に通園しづらい状況だった。学校、家庭、地域でたがいに連絡を取り合い、協力する中で次第に登校するようになってきた。二人を取り巻く環境の変化、児童の様子などを報告したい。

地域に生かされ、地域に生きる  ~吐山の杜に太鼓が木霊して~

奈良市立吐山小学校 草尾 佳秀

地域遺産学習を進める中で、子どもたちは、記録誌には載っていない太鼓踊りの歴史を知った。それをプレゼンにまとめ、映画化して発信した。さらに地域の人たちに太鼓を学び、叩いた。そうしてやがて地域に生きる一歩を踏み出していった子どもたちの歩みを報告します。を身につけることをめあてに「いのちの学習」をしています。その中から、2・3年生が2歳児の園児と関わりながら学習した様子を報告します。

第6分科会 特別分科会

「特別支援教育からインクルーシブ教育へ」

常磐会学園大学教授 堀 智晴さん

日本では、2007年に特殊教育から特別支援教育へと転換しましたが、分離・別学が進行しています。なぜでしょうか。その一方で、障害者権利条約は、2006年に国連で採択され2008年に発効しました。ここではインクルーシブ教育(共に学びあう教育)を提案しています。特別支援教育からインクルーシブ教育へと転換するにはどうするか、提案します。

地域に結びついた人権学習(仮題)

奈良県同和問題関係史料センター

今年、設立20周年を迎える同センターは、県内の被差別部落に伝わる史料の収集や分析を通じて、この間、「部落史の見直し」の作業を進めてこられました。 講演では、開催地大和郡山の人権スポットの紹介をはじめ、近年各地で取り組まれるようになった人権マップを活用し地域における関係性に着目した学習や研修の意義等を中心にお話しいただきます。

教育のなかのジェンダー平等を求めて ~人権とのかかわりで考える~

関西大学人権問題研究室委嘱研究員大学非常勤講師 源 淳子さん

あらゆる場でのジェンダー平等が求められている。それは教育現場においても同様である。なぜジェンダーが見直されなければならないのかを明らかにした上で、教育現場のジェンダーを考えたい。それは、自分自身の足元の人権を問うことと密接な関係があり、生きやすさにつながることが明らかになるだろう。

全体会 記念行事

「一人ひとりの子どもたちが輝くために」

シンポジウム企画運営 大和郡山市人権教育研究会

1966年、同対審答申が出されたその翌年、長欠、不就学を余儀なくされる目の前の子どもたちの状況やくらしの現実を見つめて取り組まれてきた先達の熱い思いによって市同教が結成され、47年が経過しました。時代の流れとともに状況が変わりましたが「困っている子どもたち」や「輝ききれていない子どもたち」が今も少なくありません。本シンポジウムにおいて、次の世代を担う方々に、テーマをもとに語り合ってもらいます。そして、継承していくべきものについて確かめ合いたいと思います。

全体会 記念行事

「不登校を考える(仮題)」

天理大学人間学部 人間関係学科教授 千原 雅代さん

学校へ行きにくい、あるいは行かない子どもたちとの関わりの中からみえてくるものは、決して怠惰や甘えという言葉では表すことができない子どもたちの心の叫びです。また、いじめの状況や背景などを理解していくと、家庭、学校、そして社会で大人が考えねばならない課題が見えてきます。子どもたち自身が乗り越えてゆく課題とそれを取り巻く大人に与えられた課題を取り上げ、子どもたちが元気になり社会的な自立を果たせるようになるために、まわりはどうあるべきか、課題を背負った子どもたちに関わる際に大人に求められることなどをお話ししていただきます。