事業報告

第61回奈良人権教育研究大会 報告等の概要

第1分科会 教育内容の創造と学習活動

第1分散会

「 困ってること、あってんな」~友だちから仲間へ~

奈良市立東市小学校 竹田光陽・松尾理香

特別支援学級に在籍するゆうた(仮称)の苦手なことや助けてほしいことを学年集会で知らせていくことになりました。周囲の子どもたちは、自分のつらいことやみんなにわかってほしいことを次々と語っていきました。その集団の高まりを識字の学習につなぎ、生徒さんの生き方と自分たちを重ねる取組を進めてきました。

「先生、ハーフの子どもってなんていうの?」~反戦・平和の学習から~

上牧町立上牧小学校 矢追博美

ある授業の後、突然の子どもの問いに私は動揺しました。それまで、「人権教育とは」「部落問題学習とは何か」の答えを見つけられずにいたからです。この発言を受け、目の前の子どもたちと学習を進めていくうちに保護者の思いも知りました。やがて、子どもたちが自分を語り始め、私自身の心も動き出し、問い直す日々が続くこととなりました。

「こんなことぐらい」は許さへん!

桜井市立初瀬小学校 山口由加

部落問題学習の入門期の教材として、初版のなかまからずっと大切にされてきた「さるとかに」に取り組んできました。「こんなことぐらい」が命を奪うことに焦点を当て、かにたちの憤りを十分に感じ取らせながら、真の解決の仕方を考え合い、自分たちのなかまのことについて話し合ってきました。

第2分散会

「私たちは、3年1組の目標を達成できていません」~子どもどうしがつながるために~

宇陀市立榛原東小学校 岩城吉秀

22人の子どもたちがつながってほしいという願いのもと、「君の家にも牛がいる」「島ひきおに」などの教材に取り組んだ。「つづり方」に学びながら、毎日のように学級通信を読み合った。物事の捉え方や考え方が変われば、人は変わる。肯定感のある中でこそ、人は変わる。子どもたちに教えてもらったことを伝えられればと思います。

つなごう みんなの 心と心 〜国際交流を通して〜

大和郡山市立筒井小学校 旧1年・2年学年集団

本校には、外国で生まれ育った親を持つ子ども達がいる。元気に学校生活を送っているが、生活習慣や言葉の違いから自分の思いをうまく伝えられないこともある。
そこで、国際交流員や保護者の方から話を聞く機会を設けた。それぞれの国の文化を理解し尊重し合うことが、子ども相互の理解へとつながると考え、取組を進めた。

つづらせる中で見えてきたもの、見えなかったもの

御所市立御所小学校 田中正志

始業式の日から、つづることを始めた。展開的過去形を定着させ、題材カードを書かせた。書けない子にこそ大切なことをつづららせようとしてきた。取組の中で少しだけいつもとは違う子どもの姿が見えた。しかし、子どもが自分をひらくまでにはまだまだ遠い。作品を通じて取組を報告する。

第3分散会

福島市内における経年変化から学ぶ ~福島での学びと校内での学びを通して生徒達がしてきたこと~

奈良学園中学校・高等学校 工藤博幸

2011年9月、2012~2014年は8月と12月の2回ずつ生徒が福島市内へ伺い線量計測と人々の心の変化を調べている。出会えた多くの人と交流も続いている。その学びを他の生徒にも共有したく飯舘村村長、福島高教諭、環境省除染情報プラザ専門員、南相馬市立病院医師に来校いただき学びを深めようともしてきた。

職場体験をきっかけに 男女に関わる問題を学ぶ

田原本町立北中学校2年学年 教師集団

「職場体験学習」をキャリア学習ととらえるだけでなく、子どもたちが社会に目を向けるきっかけや人間の尊厳に対する目を養う機会としても活用できないかと考えました。また、発展学習としてセクシュアルマイノリティー問題にも触れ、自分や他者の多様な「性」を肯定することの大切さについても学びました。1年間の取り組みを報告します。

「夜間中学校は必要か?~夜間中学校からの宿題~」(夜間中学校との交流会とその後)

天理市立西中学校教師集団

幼い頃学ぶ機会を奪われ、大人になり喜びを感じながら夜間中学校に通う人々について学んだ。また、夜間中学校の先生と生徒さんの話を聞く機会も得た。その中で、「本来は、夜間中学校はないほうがいいです。なぜでしょうか。」という宿題を出された。その答えを求めて、夏休みに夜間中学校を訪問した。

第2分科会 進路・学力保障

第1分散会

「この子が一番輝ける進路を」~集団づくりと学力保障のつながりを感じて~

香芝市立香芝東中学校 吉田香・佐々木海

特別支援学級に入級しているA君と「支援シート」を作成しているB君は同じクラスで、すべての活動を原学級でなかまと共に行っています。二人の進路に対する保護者の思いから学んだこと、なかまと共に学ぶ二人の姿から見えてきたことについて報告いたします。

はじめの一歩 ~初めて持つ学級で生徒達から学んだこと~

大和高田市立片塩中学校 山本健太・鍵谷昇・横井弘子

初めて学級担任を受けもった3人が、情報を共有し、共に考え、支え合い、先輩教員にも相談しながら取り組んできたことについて報告する。

「Aと歩んだ3年間」

御所市立大正中学校 和田雄弘

Aは三年間担任として関わってきた生徒である。普段は友だちも多く、人懐っこい性格だが、逆上すると自分の言動も覚えていないくらい興奮することもある。そんなAに寄り添い、ときにはAと闘ってきた。担任として日々、自問自答しながらやってきたAとの関わり、そのことを通じての学級の子どもや自分の変容を報告したい。

つながりを大切にしながら ~県内唯一の公立通信制課程として             

県立大和中央高等学校通信制 中村 卓

 本校に入学してくる生徒の実態に即して、一人一人のつながりを大切にしながら、学力保障とともに自尊感情を高めながら、生徒の自己実現を果たさせようとする取組を報告します。 

第2分散会

あそびから学びへ ~幼・保・小をカリキュラムでつなぐ取組~

香芝市立旭ケ丘小学校 第1学年集団

幼稚園・保育所と小学校をつなぐために、①カリキュラムの連携②子ども同士の交流③なかまづくり④自尊感情を育てる。に取り組んだ。特に、滑らかな接続には、小学校入学当初のカリキュラムを工夫することが最も重要と考え、小学校でできるスタートプログラムを中心に報告する。

不登校生の対応と、学力保障

奈良市立三笠中学校 松村千寿・富野昌美

全国平均に比べ、不登校の割合が多い本校における対応や対策のためにおこなっている取組について報告します。不登校のつまづきの要因のひとつとして、学習に積極的に取り組めず、登校の意欲を失ってしまう生徒もいます。学習に対する不安から登校意欲を失わないように、全校生徒を対象とした学力保障の取組を報告します。

算数はわかれば楽しい!! ~基礎学力の保障を目指して~

大淀町立大淀希望ヶ丘小学校 車谷由記子

本校で少人数指導に関わって三年余り。子どもたち一人一人に確かな学力を保障することを目指しています。日々、算数の授業を展開する中での様々な工夫や、子どもの実態・変化等について、また、今年度から学校全体の取組として始めた放課後学習「のぞみ学習」について報告させていただきます。

第3分科会 自立と共生をめざす集団づくり

第1分散会

ぴかぴか にこにこ フレンズ ~つながりを深めていくために~

葛城市立新庄北小学校 坂田昌代・山岡佐和

特別支援学級に入級している児童と、他の児童とが互いに理解し合い、つながりを深めていくための取組を「交流学級でのつながり」、「交流学級での活動をより豊かにするための合同学習(自立活動・生活単元学習)の取組」・「学校全体につながりを広げる取組」の3つの視点から発表させて頂きます。

みんなの中に

天理市立丹波市小学校 山田真紀

入学式の会場に入れなかったA君。初めてがいっぱいの毎日は、学校生活のルールが受け入れられず、大声で泣き叫ぶ日々・・・そんなA君とどう付き合えばいいかわからず、周りの子も私もとまどう毎日。それでも、日々一緒に過ごす中でA君のがんばりを認め、応援する雰囲気が出てきた。A君と過ごした学級の様子を報告したい。

Aの成長 ~自己有用感を育みつつ~

五條市立野原中学校 玉木紀子

初めて特別支援学級を担任してAと出会いました。自尊感情が低い状態だったAが、原学級の子どもたちと共に体育大会や職場体験に取り組み、部活動などを通して、大きく成長を遂げました。子どもたちのつながりの中で、自己有用感を育むことで変容を遂げたAと、その仲間たちの姿を報告します。

第2分散会

「夢見る力」を、明日を生きる子どもたちに ~自分の可能性を信じ、なかまとともに歩む集団づくり~

五條市立五條小学校 小松完次・德本義和

学校全体が大きく揺れ動いた時期がありました。下を向く子、横を向く子、荒れる子どもたちを何とかしたい。何とかしなければと、私たち教職員全員がスクラムを組み、子どもたちのさまざまな現実や背景と向き合いながら、本来の学校を取り戻すための歩みを進めてきました。これまでの取組を報告させていただきます。

Aと共に歩んで、学んできたこと

河合町立河合第一中学校 長嶺義昭

初めての学級担任を任された2013年。なかまの小さい、そして見えにくい「がんばり」にも互いに気づくことができる学級集団になればと思い、学級通信を発行してきた。「わがまま」で「興味がないことには無関心を装う」Aと、Aから「その個性をなかなか認めてもらえない」B。二人のつながりを中心にクラスの変容を報告します。

先生の言葉には心がない

三郷町立三郷中学校 玉城達也

入学式前日、A宅を訪問した。これからともに頑張っていこうと彼に伝えた。入学式当日、Aは異装で登校してきた。それが彼との出会いだった。学級に居場所をつくりたい、なかまとのつながりをつくってほしいと強く願った。彼をめぐる学級の様子、子どもたちと過ごしていく中で僕が気付かされた事、学んだ事を報告します。

第3分散会

あつまれ つながれ ひとつになあれ ~目指せ!最強チーム4年~

奈良市立あやめ池小学校 米田倫子・前川公美・古木義人

楽しいときはいっしょにいるけれど、つながりきれていない4年生。しんどいときやだれかが困っているときにこそ、相手を思いやる心を持ってほしい。4年生がひとつのチームへと成長することを目指し、取り組んできたことを報告します。

あったかいことばでいっぱいの学年をめざして

大和高田市立菅原小学校 旧6年生学年集団 吉田恒彦・椿本拓也・堀内みゆき

様々な理由からしんどさを抱えた児童への個人に対する取り組み、そしてそのまわりの学年全体としての取り組みを通して児童がどのように変容したか報告します。とりわけ少し高い目標に向かって学年がひとつにまとまっていく、その中でしんどさを抱えた児童をつつみこむ雰囲気ができあがっていく様子を紹介します。

「録音するからもう一回言って」~子どもからの贈り物~

御所市立葛上中学校 近藤直也

一人の男の子を転校にまで追い込んでしまい「自分には担任なんてできない」と思った教師1年目。時を経てまた私にも担任をさせてもらえる機会がやってきました。
子どもと子どもをつなぐことを第一に考え、子どもと向き合い、取組を打ち続ける中で起こってきた、子どもたちと私自身のささやかな変化を報告します。

第4分散会

「みんな すてきだね」~互いを認め、大切に思える子どもをめざして~

葛城市浄正院保育園 北中智子・櫻井愛弓

精神発達遅滞であるA君。4歳の時に比べると、少しずつ友だちのことが気になってきた様子。5歳になり、「集団生活ができる」「音楽に慣れる」「友だちとの関わりを増やす」の3つの目標をたてて取り組んできた。A児の目線に立ち、寄り添うことから始めた取組を報告する。

子どもたちのつながりを深めるために

 生駒市立俵口小学校 飯田敦士

本校では、「ちがいを認め合い、自分や仲間を大切にして、共に高まろうとする集団づくりをめざす」を重点研究課題として取り組んできました。
 本校の児童は、子どもらしい元気さや素直さをもち、友だちに優しく親切にできる児童がたくさんいます。しかし、中には自分の思いをなかなか言えない児童や、自己肯定感が低い児童、自己中心的でまわりが見えにくい児童などもいます。家庭環境も様々です。一人ひとり違った特性・生活をもつ子どもたちですが、その子どもたちをつなぎ、そのつながりを深めようと、「集団づくり」に取り組んできました。ここでは、5年生の取組を中心に紹介したいと思います。

うん みんなとしたいねん

大和高田市立土庫小学校 矢野美紀

4年生23人、元気いっぱい個性的な子どもたちです。しかし、さまざまなくらしをかかえている子どもたちでもあります。ぶつかりあったり、傷つけあったりしてしまうこともありますが、そんな子どもたちと共にのびようとしているなかまがいます。この23人の子どもたちの話を報告します。

第5分散会

「障がい者スポーツから学ぶ友情連帯」

橿原市立橿原中学校 亀井陽介

1学年は、男女205名で新学期をスタートしました。生徒は個性豊かで元気ですが、慣れてくるにつれ、注意する事も増えてきました。また地域の学校で学びたいという願いを持った特別支援学級の生徒と共に学習していくため、お互いを認め、支えあい、共に生きるなかま集団になるという学年目標を設定し、取り組みました。

1くみは みんないっしょで たのしいな ~きら☆きら輝く子どもたちと共に~

葛城市立忍海小学校 杉村茂美

大きな期待と不安の中で、小学校生活の第一歩を踏み出す一年生。新しい友だちと出会い、様々な体験を通して「学校は楽しいな」「友だちっていいな」と感じられるような学級の集団づくりを目指してきました。難聴学級に在籍するA君を含む30人の子どもたちと、人権尊重の3つの視点を軸に進めてきた取組を報告します。

「会いに行こうよ」

平群町立平群小学校 岡田裕子

国語科「だれもがかかわりあえるように」の「手と心で読む」の学習をしていたときに「目の不自由な人ってどんな生活をしているの」「点字が読めるってすごいなあ」「学校ではどんなことをしてるんやろ」「あいたいなあ」「会いにいこうよ先生」子どもたちの願いから、盲学校・ろう学校へ見学に行くことが決まった。

第6分科会 特別分科会

「子どもを見る眼」~集団づくりの意味~

大阪教育大学 土田光子さん

長年に渡る同和教育の取り組みが、わたしたちの『子ども観』を大きく変えてくれた。同和教育を通して、わたしたち教員の『子どもを見る眼』が変わり、「子どものせいにしない」「親のせいにしない」という姿勢を身につけたわたしたちは、そこではじめて教員になれたのだ。今、この『子どもを見る眼』は本当に継承されているのか。ともに考えていきたい。

青年期に至る子ども・若者の支援について ~抱えること、送り出すこと~ ~奈良県下で一番手厚い葛城市の支援について~ 地域臨床心理学の立場から

関西大学臨床心理専門職大学院 教授 石田陽彦さん

H7年に始まった「文部科学省スクールカウンセラー活用調査研究事業」で、たまたまH8年から赴任することになった葛城市でのこれまでの18年間の活動についてお話します。学校張り付き型のSCから地域連携を模索し、H22年に施行された内閣府の「子ども・若者育成支援推進法」の活用による地域支援活動など、「地域臨床心理学」の新たな展開についてもお話したいと思います。

インクルーシブな社会に向けて ~「合理的配慮」を手がかりに~

(公財)世界人権問題研究センター 研究第5部(人権教育)専任研究員 松波めぐみさん

日本も2014年1月に批准した 「障害者権利条約」は、障害のある人が差別や不利益を受けるのは「社会的障壁(バリア)」に原因があると考える。バリアを撤廃し、インクルーシブな(誰も排除されない)社会を創っていくには、教育の場がインクルーシブでなければならない。本講義では新しい「差別」 や「合理的配慮」の考え方を紹介し、インクルーシブ教育実現のヒントとしたい。

全体会 特別報告

葛城市人教「生徒現地学習会」の取組から ~水平社のハートを伝えて~

1.葛城市人教10年 水平社現地学習会から ~水平社のハートを伝えて~

葛城市人権教育研究会 事務局長 日置敦

葛城市人権教育研究会では、部落問題の解決をめざし、それにつながる教育の内容を創造してきました。また、部落差別に抗って立ち上がった先人の思いや願い、その生きざまについて学び、市人教会員が中学生に伝える「現地学習会」を、水平社博物館ならびに周辺で実施してきて10年目になります。その取組を報告します。

2.生徒の活動を通しての  学年作り ~みんなで世界一の学年にするために~

葛城市立新庄中学校 西川幸佑・札辻リカ

入学してからの生徒の様子と、1年生時に起こった問題点や課題をふまえ、2年生になって心機一転「がんばるぞ」という雰囲気の見られる中、またまた数々の出来事が発生。その出来事に子どもたち同士が向き合う姿や、様々な活動に取り組む日々の子どもたちの様子を報告します。

3.水平社宣言から自分宣言へ ~これからの自分の生き方を考える学習~

葛城市立白鳳中学校 亀田浩二・萬年史佳

部落差別の歴史を正しく認識し、差別に立ち向かった人々の思いや願いを「水平社宣言」からとらえ、現在も根強く残っている身近な人権問題について各々が「自分宣言」することでこれからの生き方を考える学習を行いました。ゲストティーチャーをお招きして学習を進める中で生徒が人権問題をどのようにとらえ、実際の行動に移そうと考えたか、本校が取り組んだ人権学習について報告します。

全体会 記念講演

「人権の本当の意味〜いじめとおとな~」

大阪大谷大学教授 桜井智恵子さん

個別救済の経験から、子どもが攻撃的になる時、おとなや地域社会に共通の状況があると分かってきました。そこからもたらされる子どもの困難を具体的に軽くし、学校や社会をゆるめることでおとなの生きづらさも楽になります。教職員が多忙で子どもに向く時間がないという問題も深めて考え、私たち社会の課題整理を試みます。