事業報告

第66回奈良人権教育研究大会 報告等の概要

第1分科会 教育内容の創造と学習活動

第1分散会

○○っ子 みんなで取り組む人権学習

奈良市内小学校

部落問題学習では、これまでの取り組みを土台に、プラスイメージでの出会いを大切にしてきました。人や物の命、それらを支える人々の労働、自分に関わるすべての物事のつながりについて学んだり、なかまと力を合わせて作り上げたりする体験を人権学習に取り入れ、全学年で取り組みをしてきたその一部を報告します。

差別といのち~決め付けるのはとても腹が立ちました~

桜井市内小学校

昨年度一年間を通して取り組んだハンセン病の学習。子どもたちと差別の現実に深く学び、また自分たちの差別の心と向き合い、多くのことを学習した。映像や写真、映画など様々な資料を通し、さらに当事者の方と出会ったことで深く学ぶことができた。一年間の活動と変容について報告したい。

ダム建設問題から考える人権学習 ~立場を考えるための教材開発について~

葛城市内小学校

本学年の子どもたちは、自分のことを理解してもらえなかったり、相手のことをわかろうとすることができなかったりしたために、年度当初気づかぬ間に互いが傷つけ合ってしまうトラブルが多く起こりました。そのため、まず子どもたちが自分を大切にし、相手の立場にも目を向けて考え行動できるようになってほしいと願い、教材開発に取り組みました。その一つであるダム学習について、実践を報告します。

第2分散会

子どもの姿に学びながら「つなぐ」「つながる」

天理市内小学校

何に対しても不安な様子を見せる十八人十八色の一年生の子どもたち。スムーズに学校生活の第一歩を踏み出せるよう取組をすすめてきた。幼小交流、自作プリント教材での学習やペア学習による学び合いの中でキラリと光る姿、和太鼓に触れ食肉や毛皮革に出会う活動での様子を報告したい。

つづることでつながる子どもたちを目指して

磯城郡内小学校

本校は、全校89名の小規模校である。そのような集団で過ごす児童が自他ともに認め合える集団をつくるために、「自分のことを知ってもらう」ことに重点を置き、低学年集団で、”生活綴り方”の取組を行った。生活を綴ることで、新たな一面が垣間見え、つながっていた児童のようすを報告する。

ゆたかな教育内容の創造 ~体験を通して身に付く力~

高人教 県立高等学校

本校に入学してくる生徒は、低学力であったり、不登校であったり、障がいがあったり様々な事情を抱えている。本校では基礎学力を身につけると同時に、県外農業実習や職場実習などの体験を積み重ねることで、自分にもできるんだという気持ちを持たせると同時に、コミュニケーション能力の向上を図り、社会で生きる力を育成している。

第3分散会

中学生だからこそ教える性教育

生駒郡内中学校

過去に性犯罪につながるような生徒指導事例を経験した我々は、その苦い経験をふまえて性教育に取り組むことにした。性に興味をもつ中学生に向けて、学年教師がkanかんかんがくがく議論して「避妊」を教えるところまで深く取り組んだ。そんな中で見えてきたことは…。中学校でこそ、おおらかにしなやかに取り組む必要性を伝えます。

いろいろな国の人と出会おう

香芝市内小学校

さまざまな国にルーツをもつ子どもたちが、生き生きと自分のアイデンティティを語れるようになってほしい。また、身近な人や友だちに関わる国の文化と出会い、そこから自分の考えや意見をもち、行動できる人になってほしいと願い、学年集団で取り組んできたことを報告します。

だれもがよりよく関わり合うために

宇陀市内小学校

国語の教材「手と心で読む」では、点字を発明したルイ・ブライユのことが紹介されています。そこで、身の回りにある点字を探すだけではなく、点字の仕組みを学んだ後、情景が伝わる俳句を実際に点字で打ちました。また、身近にあるバリアフリーについて調べたことを学習参観や、地域の人権フェスティバルで発表しました。

第4分散会

自分を見つめ、なかまを見つめ、社会を見つめ、つながろうとする人に

宇陀市内小学校

担任として、「子どもたちに出会わせたい」「子どもたちと一緒に考えたい」「見過ごしてはいけない」そう感じる物事ってたくさんあります。大相撲春巡業・シリアの内戦・部落差別・・・。「広く浅く」ではありますが、6年担任として大事にしたことを報告します。

子どもと向き合う、子どもを見つめる

大和高田市内中学校

「先生って俺らのこと大切にしてる感じないよな」初めて担任をした生徒から言われた一言。自分に足りないものは何か。「生徒を大切にする」とは…。悩み続けた3年前。昨年度から再び担任を持ち、悩みや課題をかかえた子どもたちと向き合う中で私自身が気づかされたこと、考えたことを報告します。

第2分科会 進路学力保障

第1分散会

「ここ」にいない子が「ここ」にいる

天理市内小学校

心ってなに?神様なんているの?休んでいるぼくが特別扱いされるのはいや。死にたい。ぼく何もできない。どうしようもない感情と自分へのプレッシャーが本人の心を傷つける。同じ子どもは一人もいない。子どもに同じパターンはない。だからこそ子どもに応じてよりそう。不登校のAと付き合い、葛藤した活動の報告をする。

子どもに寄り添うこととは-場面緘黙のA・母親との出会いの中で-

香芝市内小学校

一昨年度の2学期から登校できなくなった場面緘黙のA、昨年度学級担任をすることになった。毎朝家庭訪問、「おはよう」の一言、いつもAのことを話して下さるお母ちゃん。はたして、どこまで寄り添うことができただろうか。今年6月、「○○教室に行ってみることにしました。」給食時に母親からの電話・・・。

今、○○夜間中学校では~夜間中学校で学ぶ生徒さんたちの姿を通して~

奈良市内中学校

夜間中学校を取り巻く状況や夜間中学校で学ぶ生徒さんの姿も変化してきました。その変化の要因の一つには、不登校状態で昼の中学校を卒業していく生徒(実質的義務教育未修了者)の増加があります。現在夜間中学校で学ぶ生徒さんの姿を通して、夜間中学校に訪れている変化や新しい課題などを報告します。

第2分散会

「自分の思いを言葉に」

天理市内小学校

Aは、少しでも気に入らないと、相手に暴言や暴力を振るう。注意をするが荒れるばかりで、どうしたら良いか悩んでいた。ある先生がこんなことを言った。「暴言は出てくるが、本当に伝えたいことは何一つ言えていない。」そこから、Aの思いを引き出したい、丁寧に聴きたいと強く思った。自分の思いを伝えられるようになってきたAについて報告したい。

「子どもの味方になって」~多様な子どもたちと向き合う中で~

磯城郡内小学校

昨年度担任していた2年2組は、多様な子どもが多く、特別な支援を要する児童・学習支援が必要な児童・友だちとの関係が築けず、もめごとに繋がってしまう児童が在籍していた。今回は友だちとのコミュニケーションに悩み、うまくクラスになじめず不登校になった児童Aを中心に、昨年度の取組を報告したい。

一人一人が輝くために ~夢や目標を実現し合うなかまづくり~

五條市内中学校

2014年から現在まで中国からの新渡日生徒が在籍している。生徒が日本の中学校生活に早く馴染むような支援や、他の生徒との繋がりをつくるための様々な取組を行っている。加えて、生徒が自分の将来に展望をもつことができるよう心に寄り添いながら、サポートも継続している。本報告では、その生徒たちの変容を報告する。

第3分散会

ぼく、別になんも困ってへん!

生駒郡内小学校

養護教員として長く勤めてきたのに、私は「色覚」のことを何も分かっていなかった。「色覚異常者」が,鉄道運転士や消防士になれないのは、仕方がないと思っていた。でも、それは間違いだった。色覚特性のある子どもたちが本当の意味で不利益を受けないために、授業や研修等に取り組んだことを報告する。

個性を生かし 生きる力を育てよう ~自立に向けての日本語指導~

天理市内中学校

新渡日生徒は夜間中学で日本語を学びながら社会への理解を深め、生きる力を身につけている。教える側は授業内容を工夫し、彼ら(彼女ら)の自立・自己実現に向けての支援を行ってきた。今回は夜間中学で学ぶ新渡日生徒がどんな生活をし、何を求め、何を必要としているのか、様々な生活相談などから見えてくる姿を報告する。

第3分科会 自立と共生をめざす集団づくり

第1分散会

居心地のいいクラスって素敵だな ~A児との関わりを通して~

生駒市内幼稚園

「知らない人」の前では話そうとしないA児だが、仕草や表情で気持ちを伝えようとする場面も出てきた。そこにはA児のありのままを受け入れているクラスの友だちの存在が大きく関わっている。A児を見つめながら、また、A児とだちの関わりに寄り添いながら、気づいたこと感じたことについて報告していきたい。

「おれのこと好きなやつなんかおらへん!」から見えてきたこと

五條市内小学校

「~が悪い、~のせいや」と言って、相手を叩いたり暴言を吐いたりする毎日。事情を聞いても「どうせみんなおれのこときらいや!友だちなんかおらへん!」と、いつも泣きわめきながら訴えた。子ども自身が気もちを適切に表現できるよう、行動の原因にある感情に寄り添い理解することに重点をおいて子どもに関わり続ける。

創造・継承 ~平和学習から得たもの~

橿原市内小学校

本音で話ができない子どもたちの実態から、他者との関わりの大切さを知り、周りを気にし過ぎず自分の考えや思いを大事にして発信していく力を身に付けてほしいと考えた。平和学習を通して「あきらめないこと」「お互い支えあうこと」「我慢すること」などを学び、課題を改善しようと実際の学校生活に活かす姿が見られた。

第2分散会

Aの変化に向き合いながら

橿原市内小学校

一学期まではほとんど欠席のなかったAが、家庭の出来事により、夏休み明けから不登校になりました。スクールカウンセラーや子育て支援課とケース会議を開いて、決まった方針をもとに本人、保護者、クラスのその他の子どもたちへどのように支援していったのかを報告します。

もう1回あいつを信じたい~彼の居場所はあったか○○~

奈良市内中学校

Aの勝手な行動が目立ち、学級で自分の居場所をなくしたA。そして学校から足が遠のいた。Aの本心は、寂しい、学校へ行きたい、頑張りたいという気持ちであった。Aの居場所作りのために、元来温かい生徒たちの心の訴えかけ、A自身にも変化を求め取り組んだ学級経営を報告したい。

「Aちゃん、いいな。」

御所市内保育所

紫外線に当たると支障が生じるという体質により、戸外活動等に制限のあるA児。入所より就学までの過程で、A児にとってより良い環境をどのように保障するか。クラスの子どもたちをどのように繋げていくか。就学について思い悩む日々等、保護者と共に試行錯誤しながら進めてきた取り組みを報告させて頂きます。

第3分散会

おれは、差別される側になったんか

天理市内中学校

勉強が苦手で、他人を傷つけるような言動を繰り返していたAは、家族との会話の中で、自分のルーツが韓国にあることを知りました。「おれは、差別される側になったんか」と呟いたA。本校での在日コリアンに関連する学習を通して、自分のルーツを強く意識するようになったAの日々を報告します。

3シャイン~一人ひとりがかがやくために~

桜井市内小学校

個性豊かな28名との出会い。その中でも、特にAは複雑な家庭環境を生きている子どもだった。Aを中心として児童が互いにつながり、私たち自身もつながる中で互いに認め合うなかまづくりを目指した。その中での葛藤や悩み、児童の変容について報告したい。

かがやく ひとみ つながる えがお

大和高田市内小学校

様々な背景をもつ子どもたちが多いからこそ、一人ひとりのかがやきを大切にし、まわりの子と笑顔をつなげ、なかまと共に生き生きと活動する集団づくりをめざして進んできました。個々に寄り添い、思いやりの気持ちを育て、いろいろなことにチャレンジしながら共に歩んだ昨年度の取り組みを報告します。

第4分散会

一人でできるもん~みんなで考え みんなで見守った特別支援教育学級~

大和郡山市内中学校

Aの存在は周りの生徒に『違い』を投げかけ、生徒らが『認め合う』ことの大切さを集団生活の中で知った。私たちはお互いの存在を心地よいものにするにはと自問し、学校全体の体制を考え、その結果全教員と生徒らが支える特別支援学級になった。Aを中心に『誰もが安心して過ごすことのできる学校』についてみんなで考えたことを報告する。

みんなで一緒に育ち合おう ~人工呼吸器はAくんのヒーロー!~

橿原市内こども園

人工呼吸器をつけたA児を受け入れるにあたり、家庭と看護師、園職員とが密接に連携をとりながら、一人の教育を保証するために必死に保育に向き合ってきました。プールやリレーなど困難なことがある度に、クラスで話し合い、5歳児みんなで育ち合ってきた姿や、A児の葛藤を報告します。

共に生きる~みんなとだからできたこと~

御所市内小学校

今年度初めて特別支援学級の担任になり自閉症Aと出会った。コミュニケーションをとることが苦手なAと学級の児童をつなぎたい、支え合って成長してほしいと願ったが思うようにいかず苦悩の日々が続いた。そこで運動会をキッカケになかまの支えの中でAが自分に自信をつけて、一人で走れるように目指した日々を報告したい。

第5分散会

あるがままに ~共に歩んだ4年間~

御所市内小学校

4年前に○○小学校へ赴任した。今まで担任経験がなかったことや、教師集団の意識の違いに私自身本当にやっていけるのかと不安に思った。そんなドキドキのスタートから、熱い教師集団に揉まれながらも、子どもたちと、かざらず、かまえずに真正面からぶつかった4年間の日々を報告したい。

「そうだんできるなかま」になろう

高市郡内中学校

「これは自分の個性だと考えています」―Aは自分の苦手なことも、前向きに受け入れる。しかしAがそうして自分を受け入れられるようになるまでには多くの葛藤があった。その中でAと共に、家族やなかま、そして私も多くのことを学び、成長してきた。

つながろう!みんなで伸びよう!~『あこがれの6年生』をめざして~

大和郡山市内小学校

仲良く協力しながら活動することができる子どもたち。けれども、自信がないためか指示を待つ姿も少なくなく、自尊感情や自己有用感の低さが感じられる。そこで、最高学年としての意識を高めるとともに、周りの人との関わりを生かした取組を進めることで個と集団の成長を目指したいと考えた。

 第4分科会 学校・園・所づくり    

     今年度、分科会報告はありません。

 第5分科会 保幼こ・小・中・高・地域の連携と教育力

     今年度、分科会報告はありません。

第6分科会 特別分科会

誰もが過ごしやすい学校にするために~LGBTQからSOGIへの転換~

新設Cチーム企画  塩安九十九さん

LGBTという言葉が一般的に知られるようになってきたが、具体的な対応ができている教育機関はまだ少数だ。今回は基礎を踏まえている人を中心に、実際の学校作りや当事者かもしれない生徒で困難を抱える具体的なケースへの対応や支援の在り方を考える。また将来どのような包括的社会を作って行けばよいのかも検討する。

『命と向き合って』~院内学級のことを~

橿原市立今井小学校 県立医大病院院内学級  藤本 節美さん

院内学級は、ケガや病気で長期入院しなければならない児童・生徒のために病院内に設置された病弱・身体的虚弱特別支援学級です。入院を余儀なくされ、目標が持ちにくく、生活のリズムが乱れがちな子どもたちの精神的な支えとなり、学習面でも遅れないように基礎学力の充実を中心とした指導を目指しています。

子ども・保護者・なかまの心根に寄り添うために~自分らしい生き方を見つけるための支援~

大和高田市教育委員会事務局青少年課  井芝満喜子さん

自分が葛藤している時に出会ったアンガーマネジメントの学びが、自分の視野を広げ、大切なことに気づき生き方をも楽にしてくれました。たくさんの人と関わるこの仕事。様々な葛藤や悩みの心根には、本当の願い思いがありました。自分がどれだけ相手の心根を理解し受容するかで、自分の支援の質も変わってきました。

全体会 オープニング

大和高田市人教

太鼓演奏「つながれ ひびけ わたしたちの太鼓」

大和高田市立陵西小学校 6年生のみなさん

太鼓にこめられてきた人たちの思いを受けつぎ、その思いを次へとつないでいくために、太鼓作りの職人の北出さんと一緒につくった太鼓とともに、5年生の運動会で踊った思い出の陵西ソーランを披露します。

全体会 特別報告

大和高田市人教

いのちをつなぐ

大和高田市立陵西小学校 旧5年学年集団

子どもたちの心と心をつないでいくことができれば大きな力となり、自分や周りの友だちの力を信じ合うことが大きな安心につながるのではないかと考え、「受け継がれてきた誇り得るいのちをつなぐ」仕事を守り続けている映画「ある精肉店のはなし」の北出精肉店の北出昭さんとの出会いをとおして、それぞれの「いのち」を真ん中に据えた取り組みを報告します。

全体会 記念講演

部落史がかわった!-新しい人権の歴史への理解がもたらす大きな可能性-

大阪市立大学元教授 上杉聰さん

これまで「士農工商えたひにん」という安易な図式が、教育の場で誤って使われ、歴史理解はその骨格において、大きな間違いを繰り返してきました。今、改めてその誤解を克服することで、その先に「新しい人間理解の地平」が、幼児・低学年から高校教育まで開けてくることを共有したい思います。また差別を根本に返ってとらえ、それを克服する方法を、子どもたちへ届く方法で提案したいと思います。