事業報告

第68回奈良人権教育研究大会 報告等の概要

第1分科会 教育内容の創造と学習活動

第1分散会

團(かたまり) ~わんぴーす~ 完全燃笑!!!

大和高田市内小学校

入学当初、自己中心的な子どもたちが多いと感じたこの学年。しかし、一人一人が大きな可能性を秘めているとも感じました。そんな子どもたちと、水平社博物館への現地学習や地域教材を含めた人権・部落問題学習等の取組を重ね、これからの時代を生きていく子どもたちの人権感覚を高める取組の一端を報告します。

コロナ禍の人権・部落問題学習の取組から学んだこと

桜井市内小学校 人権教育推進部

コロナ禍の不安な厳しい状況の中でスタートした昨年度。さまざまな活動に制限や中止を強いられる中、本校の人権・同和教育の中核となる活動や研修、部落問題学習の取組をどう進めていくかなど立ち止まり悩まされる状況にあった。本校としてできる方法を模索しながら実施し、総括を踏まえて本年度の取組に繋げているところである。

「青空~みんな同じ空の下~」

北葛城郡内小学校 旧5年生学年集団

自分の意見に自信がなく伝えることに躊躇する、会話をしているようで聞いただけで終わってしまい、それがもとでトラブルになりがちな、自分の意見を表出することだけで満足し、周囲の意見を聞いていないなど、様々な「しんどい」思いを抱えた子どもたちが自分の居場所を探しもがく中で、互いを認め合い自分を好きになれるように関わり合った一年間の取組を報告する。

第2分散会

多面的・多角的に考えよう ー生類憐れみの令から、そしてイスラム教までー

生駒郡内小学校

トラブルが絶えない学年。原因の多くは友だちの言動に振り回されたものや、安易な同調による対立などだった。事実を確認することや、発言の背景を考えることが少ない。つまりは現象面で判断し行動することが多いのだ。そこで道徳を初め教科の学習でものごとを多角的多面的に見る力を育てることに力を入れて取り組むことにした。

一人ひとりを大切に 子どもたちの豊かな未来を育む~ 一人ひとりの個性にあわせた指導を目指して ~

橿原市内小学校 旧4年生学年集団

目の前には、多様な個性や課題を抱える子どもたちが多くいた。そんな子どもたち一人ひとりがもっと自分の思いを上手に表現したり、相手の思いを聞いて受け止めたりできるように、自分と他人の大切さを今以上に認められるようにと考え、一年間の取組を進めてきた。その取組の中で起きた子どもの変容を中心に報告をする。

ルール考案プロジェクト

大和郡山市内小学校 旧5年生学年集団

コロナ禍でスマートフォンやゲーム、タブレット端末を扱う時間が増えた。保護者間でも情報を共有する場が少なく、家庭毎にルールの差がある。その中で児童が自分たちで共通のルールを作り、実践する中で、日々の自分の姿を振り返り、ルールの大切さを感じるとともに、情報を発信する意義を感じさせたい。

第2分科会 進路・学力保障

「できなかったことができた ~分身ロボット《OriHime》とともに~」

北葛城郡内中学校

HSCであるAは、学校に行くことにかなりの不安を感じる。しかし、Aは、常に「学校に行きたい、友だちと話したい」という思いをもち、自分のペースで登校していた。そんなAだが、不安がだんだん強くなり、1年生の3学期は2日しか登校できなかった。その状況をなんとか打開するため、自宅にいながらオンラインで授業に参加できる方法を考えた。今回は、分身ロボット《OriHime》を活用した取組について報告する。

学級における不登校傾向の生徒に対する支援とその対応

宇陀郡内中学校

本報告では、学級における不登校傾向の生徒に対する教師・学校による支援および指導について、不登校傾向の状況、不登校に至った要因、さらに学校環境適応感尺度(アセス)の調査を踏まえて、より望ましい支援の方針と具体的方策、子どもの対人関係能力の育成や学校環境への適応について検討し、その成果と課題を報告する。

夜間中学校はどんな学校?

奈良市内中学校夜間学級

今、自分の担当している生徒に生きる力としての学力を本当につけることができているのか自省する良い機会となり、改めて気を引き締め直し、夜間中学校での仕事に務めなければならないと感じました。夜間中学校の歴史と本校夜間学級の現状を踏まえて報告します。

第3分科会 自立と共生をめざす集団づくり

第1分散会

葛藤

天理市内小学校

「うざっ、死ね。」「ほっといて。」自分の想いをわかってほしいが上手く伝えられないAと、Aの「荒れ」を遠巻きに眺め、その内にある「想い」を聴こうとしない周りの子どもたち。ある出来事をきっかけにAの想いを聴こうとするようになった周りの子どもたちと、葛藤しながらも少しずつ想いを伝えるAの姿を報告します。

「先生はいい親に育てられてんな」

宇陀市内小学校

学習に落ち着いてむかうことができない児童が多い中、愛着に課題があるとみられる児童が特に落ち着きません。安心・安全を必死で求める彼の姿に加えて、彼の「先生はいい親に育てられてんな」という一言が強烈でした。本当の意味の子ども理解とは何なのか。私自身が気付いたことを報告します。

出会い、そして学びへ

御所市内中学校

初任で、不安を抱えながら赴任して、しんどいことも数えきれないほどあった。でも、様々な人と出会い、多くのことを学び、自分自身が変わっていくのがわかった。しんどさを抱えたAやBとの出会い、さらにはなんとかいい方向にいくようにと寄り添い支えてくださった保護者や地域の方々との日々を報告したい。

第2分散会

Aの居場所

御所市内中学校

小学校の時から不登校のAが中学校に入学し、私はAの担任を3年間続けてきた。「Aは何度も大人に裏切られてきた。中途半端にかかわるんやったらやめてくれ」という母の言葉に負けないように、本人や保護者との関係を築き、Aが安心して過ごせる環境をつくり、Aの自立を考えた3年間の取り組みである。

一人一人の居場所がある学級づくり

香芝市内小学校

真面目で優しい反面、自分の思いを素直に出して周りと関わることが、苦手な5年生の子どもたち。一人一人が居場所を感じられるように、自分を認めてもらえるあたたかい雰囲気づくり、安心できる友だちや担任との信頼関係づくり、自分に自信をもつ自己肯定感の向上の3つについて取り組んだことを報告する。

「Aとの関わりの中で、私が気づかされたこと」

北葛城郡内中学校

二年連続で受け持った単学級の生徒の中に、学級に入れなくなったAがいる。Aは母親との関係性を中心に様々なことに悩んでいた。悩みごとを理由にクラスに入ろうとしないAに対して、私はクラスに戻るよう促すのだが、Aとの関係は悪くなる一方だった。そんなAと様々な形で関わってきた中で、学んできたこと、これからの課題について報告する。

第3分散会

子どもたち同士が育ち合う保育を目指して

宇陀郡内保育所・園

「子どもたちがこれからの社会でより良く生きることができるように」を目標に宇陀郡の2つの保育施設で、子どもたちが友だちと関わる中で「自分で考える」「自分の思いを伝える」を軸とした保育実践に取り組み、子どもたちの主体性を尊重しながら進めてきた保育のあり方をそれぞれが報告する。

にこにこなかよし きらきらえがお

生駒郡内小学校

人工呼吸器をつけ、バギー型車椅子で学校生活を送っているAさん。「Aさんは、お直しがなくていいなぁ。」「Aさんってしゃべれるの?」とつぶやいていた一年生の子どもたちは、共に活動し関わり合う中で、少しずつAさんへの理解を深めていった。子どもたちをつなぐ活動や取組、変容していった子どもたちの姿について報告する。

自分で考え行動する力を育てる ~特別支援学級での自立活動を通して~

大和郡山市内中学校

本校特別支援学級の「自立活動」における、生徒一人ひとりの自信につながるような達成感や喜びが味わえ、自主性を育てることをねらいに取り組んできた活動について紹介したい。「自立活動」での作業学習や制作活動を通して、生徒の自主性や互いを認め合う心を養うことができた。

第4分散会

一歩まえへ ~やっぱりAがおらなさみしいな~

桜井市内小学校 

生活のしんどさからAは周りに対してうまく気持ちが伝えられなかったり、暴れたりする日々。そんなAの気持ちに寄り添いまわりの子どもたちとつなげていくための取組や、学び合いを中心とした授業づくりを報告できたらと思います。

一人一人の個性が響き合うために~多彩に輝く子どもたちと向き合う中で~

葛城市内中学校 第3学年教師集団

入学当初から全体的に明るいが、心ない発言や人の気持ちを考えない言動があった学年も第3学年になった。気になる生徒A・B・Cを中心にどう取り組んだのか。A・B・Cの心の状態、行動はどう変容していったのか。まわりの子どもたちの変容にも注視し、1年、2年の様子を中心に報告したい。

健康でたくましい心と体をつくり 生き生きと活動できるなかまづくりをめざして
~コロナ禍でも、えがおでつながろう~

五條市内幼稚園

コロナ禍で、今までとは異なった集団での生活、なかまづくりが求められています。「できない」ではなく「どうしたらできるだろう」と考え、子どもたちの実態から体づくりや人とのふれあい、つながりを大切にするなかまづくりをめざし進めてきた取組について報告します。

第5分散会

「おら、かけへん」~子どもたちと綴ることを通して~

桜井市内小学校

コロナ禍のあって、どのように集団づくりをしていけばよいのか悩みながらの一年間。学校の友だちから孤立してしまいがちなA。Aと周りの子どもたちをつなぐためにも、「ことば」を大切にし、綴る取組を進めた。そこから見えてきたAのくらしがあった。そのことから変容していく私自身と子どもたちの姿を報告する。

「わたしは、人にきつくゆったりする、からちょっとずつなをしたいと思った。」

宇陀市内小学校

2年生の学級で気になっていたAさん。友だちを引きつける魅力のある女の子なのですが、時として、友だちにきつい言葉を言ったり、友だちをなかまはずれにしてしまったりすることがありました。生活綴り方に取り組み、みんなの自尊感情が高まってくる中で変わりはじめたAさんのことを報告します。

これでいいんか〜今までの自分を振り返って〜

香芝市内小学校 旧5年生学年集団

1学期が終わりに近づき、教室の雰囲気が何かおかしい。Aさんがなんだか避けられているようである。掃除の時、Aさんの机だけが運ばれずに残っている。Aさんに話を聞くと、3年生頃から、このようなことがあったことが明らかになる。学級だけでなく、学年全体で克服していこうとする過程を紹介します。

 第4分科会 学校・園・所づくり    

第1分散会

「みんなちがってみんないい」が当たり前の社会に

奈良市内中学校

生徒Aと出会ったのは、入学前の3月だった。保護者と共に学校を訪れ、自身の性的マイノリティのことや、学校生活への不安について話してくれた。少しでも生徒Aが過ごしやすい学校にしたいと思い、学年の教師で話を進めた。目の前の生徒が「生きにくさ」を感じずに過ごせる学校生活を実現する取組がこうして始まった。

「みんな大好き!~思いやりあふれるクラスづくりをめざして~」

磯城郡内幼稚園

自分の思いを強く押し通そうと手が出てしまったり、友だちを傷つける言葉を使ったり、友だち間でのトラブルが日々起きていた。クラス内での関わりを通して少しずつ友だちの思いにも気付けるようになってほしい。思いやりの気持ちがあふれる集団づくりをめざし、実践してきたことを報告したい。

SOGIの視点を大切にした学校づくりへの第一歩

奈良市内小学校

本校では「性的マイノリティの当事者はそばにいる」「誰もが性の多様性をもっている」との認識で児童と向き合うため研修を重ねている。「多様性を認め合い、自分らしく生きること」を児童が学べるよう指導計画を作成し実践していくとともに、「あなたはあなたのままでいい」というメッセージを発信していきたい。

第2分散会

生き生きとした子どもの育成 -様々な人とのかかわり・保育の語り合いを通して-

奈良市内こども園

「生き生きと活動する子ども」の育成を目指し、保育者とのかかわりを基盤に、同年齢や異年齢の友たち、地域の方へとかかわりを広げ、豊かな遊びや生活を展開してきました。分園型こども園としての課題はありますが、ドキュメンテーションを活用して保育者間で子どもの姿を共有する「エンスタグラム」に取り組んでいます。

自分大好き、友だち大好き!~伝え合い、認め合い、助け合える集団を目指して~

五條市内小学校

本校では、自分のことを理解し好きになる、違いを認め合う、という経験が、自尊感情の高揚や肯定的な人間関係づくりにつながるのではないかと考え、学校を挙げて「構成的グループエンカウンター」に取り組み、その成果や課題を全職員で共有してきた。本報告では、5年生の取組を中心に、その成果や課題について報告したい。

 第5分科会 保幼こ・小・中・高・地域の連携と教育力

     今年度、分科会報告はありません。

第6分科会 特別分科会

今日的な人権問題の現状と課題

同和問題関係史料センター 深澤吉隆さん

今年の3月に「すべての学校で部落問題学習を」のリーフレットが刊行されました。また、部落差別の解消の推進に関する法律や条例が制定され、部落問題学習の充実が喫緊の課題となっています。部落問題学習に取り組む上で問われるのは、教職員・保育者の部落問題認識です。今年度実施した「人権教育についての意識調査」(奈良県人権教育研究会)の結果を踏まえて、今教職員・保育者に問われていることを参加者とともに考えたいと思います。

インクルーシブな社会に向かうなかまづくり

元 曽爾小中学校 吉田昌功さん

人権教育は教育の原点であるといわれます。また、へき地教育は教育の原点ともいわれます。一昨年来の新型コロナウイルス感染症による世の中の翻弄ぶりから、山間の学校で日々勤務しながら見えてきたこと、人間らしい生き方や人間らしい教育の在りようは何なのかという問いを、インクルージョンという切り口で追究できればと考えています。

部落問題に向き合う人権教育推進のために~ さまざまな取組との連携や学びをとおして ~

宇陀市人権教育推進協議会事務局 中西康典さん

学校教育現場における部落問題学習の取組は、現在どんな状況にあるのだろうか。部落差別のない社会の実現をめざす「部落差別解消推進法」や「奈良県部落差別解消推進条例」などには教育及び啓発の必要性が位置づけられている。部落問題に向き合う人権教育の在り方をいろいろな角度から改めて考え、今後の取組に活かすヒントをさぐりたい。

全体会 オープニング

「夢と出会いとやさしさと」

かぎろひ夢バンドのみなさん

   

全体会 特別報告

宇陀現地実行委員会

Ⅰ 御杖中学校の何気ない日常が人生を変える~フクシマから10年、ミツエに花は咲く~

御杖村立御杖中学校 川上祐一郎さん・並川公則さん 

2020年2月。2人の転校生がやってきた。長い間『学校』に行っていなかった2人は、実に5年と9ヶ月ぶりに登校した。その日以降ほぼ休むことなく、卒業の日まで本校で楽しく過ごすこととなるのだが、なぜ登校できるようになったのか、また、なぜ学校に行けなかったのか。そして、御杖中の生徒たちのまっすぐで温かい日々のかかわりが人生を変えるキセキとなった。

Ⅱ シンポジウム「保護者や家族の思いを受け止める」

宇陀現地実行委員会 企画運営 

学校へ行きにくい、行きたくない、行けない子どもたちがいます。私たち教職員がその子どもたちとどのように向き合っていったらいいのか。保護者やその家族の思いを受け止め、その対応策について考えていきたいと思います。

全体会 記念講演

第73回全国人権・同和教育研究大会に期待されること~教育の原点「識字」から学んできたことから~(仮題)

第73回全国人権・同和教育研究大会奈良県実行委員会 委員長 田仲敦三さん

私は、長年「識字運動」に携わってきた。識字学級生の方から、多くを学んだ。学級生さんが、文字を獲得することで社会を識り、差別に負けない力を身につける姿に触れることができた。指導者が学級生から学ぶ「識字学級」は、差別の現実から深く学ぶ場であり、今大会のスローガンにある「むなつき坂をこえる」場だと思う。このことが、「識字学級」が教育の原点と言われている所以である。私が歩んできた道をふりかえりつつ、奈良県における同和教育の黎明期から今日に至るまでの経緯を、私自身が全同教大会に参加して学んだことも含めて伝えたい。そして、人権教育を推進するために欠くことができないものとは何か明らかにして、第73回全国人権・同和教育研究大会に期待されることとしたい。大会成功に向けて、オール奈良で取り組みましょう。