事業報告

2008年度 奈人教 事業報告

夏期研修会

7月24日・25日の2日間にわたって、やまと郡山城ホール、奈良県広域地場産業振興センターにおいて夏期研修会を開催しました。4講座に県内各地から約1000人の会員が参加し、研修を深めることができました。

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【第1講座】
「子どもと響きあいたい、なかまと響きあいたい」 ~もう一度部落問題へ~ 
和太鼓集団 響組のみなさん

幕が開き、軽快な太鼓の音色が会場に響きました。和太鼓集団 響組は「あらゆる差別を無くしていきたい」「平和を守りたい」という思いを共有し、仲間とともに繋がりあうことを目的に集まった大阪市内の教職員を中心に結成された和太鼓サークルで、オープニングの「華光り」という曲の演奏の後、リーダーの多賀さんが教師生活26年の中での「たくさんの出会い」について話されました。
最初に赴任された中学校で、厳しい状況の中で子どもと向き合っている保護者と出会い、毎日のように家庭訪問をくり返す中で、聞いた「先生はええなぁ、3年間だけ(子どもらを)抱えこんだらええねんから…」という言葉が胸に響きました。そんな時、浅香太鼓集団「獅子」のメンバーと出会い、和太鼓の奥深さに魅せられ、自分たちも和太鼓サークルを立ち上げ、これまで活動を続けてこられました。
その経緯を話された後、響組のメンバー一人一人の元気な自己紹介があり、最後に軽快なナンバーの「祝彩」の演奏で幕を閉じました。
【アンケートから】
○現任校での部落問題学習のあり方をもっと追求したいと思いました。演奏も楽しく聴くことができました。
○やはり、太鼓の音はその音以上に伝わるものがあります。打ち手の気持ちがあふれる演奏は、言葉が無く
ても言いたいことがわかり合えるーという印象を受けました。

【第2講座】
「子どもを暴力の被害者にも加害者にもしないために」
NPO法人女性と子どものエンパワメント関西 理事長 田上時子さん

大阪府男女共同参画推進財団、ドーンセンターの事業コーディネーターなど多方面で活躍されている田上さんから、ご講演いただきました。
これまでの子どもの安全を守る指導は、「知らない人についていかない」「一人で外に出てはいけない」「変質者に気をつけろ」でした。しかし、子どもへの犯罪は知人が加害者になるケースも多いことや、「~してはいけない」という否定語は子どもたちにはイメージしにくく、肯定語に変えて伝える必要があること、「変質者」という発想も「知的障害者」への差別につながることなどを提起していただきました。
そして、「子どもへの暴力を防止するためには、子どもが自分で『NO(嫌と言う)』、『GO(その場を離れる)』、『TELL(誰かに相談する)』ができるようにすることがまず必要である」と述べられました。
また、子どもを加害者にしないためには、「子どもの感情をどう読み解くかが大切である。怒りなどの感情を持つことは悪いとして、封じ込めてしまうことがある。しかし、感情に良いも悪いもない。大事なことは感情を自分のやり方で静める方法を子ども自身に身につけさせることだ」と述べられました。
【アンケートから】
○感情について今まで良いとか悪いとか、すごくせまい考えをしていたなあと思いました。人間としてあって当たり前の感情なのに、それを否定していたことを反省しました。

【第3講座】
「地域で生きることを願って~障害者の地域生活支援~」
社会福祉法人 相楽福祉会 相楽作業所常務理事 廣瀬明彦さん

世の中を「障害者」の視線で見ようとされてきたご自身の経験や、戦後の「障害者」福祉の移り変わり、世界の国々での「障害者」福祉の現状などについて詳しくお話しいただきました。
「コンビニで買い物をするときに本人がお金の計算ができなくても、レジ係の方に彼のことを事前に伝えることで、自分一人で買い物をしたいという希望がかなった」という事例を紹介され、「障害者」が自分らしく生きるためには、本人の能力をどう高めるのかというのではなく、変えるべきなのは環境であると話されました。
また、周りの環境を変革することは、「障害者」自身が自己決定、自己選択しながら、自分らしく生きるという「自立」につながるのだと提起をいただきました。
そして、「一部の人を排除する社会は弱い社会である。多様な人が当たり前に生きている社会こそがノーマルな社会である。そのような社会をめざしましょう」と結ばれました。
【アンケートから】
○実際に障害のある人たちと生活を共にされている先生の講演には重みがありました。「生きやすい環境を作る」ことがこれからの福祉であり、本当の人権教育であることが分かりました。学校の特別支援教育の場でどうあるべきか、今日のお話をもとに実践に活かしていきたいと思います。

【第4講座】
「情報と人権 IT危機一髪!」
大阪府立学校人権教育研究会 情報と人権チーム 岩尾 勝さん

メールやインターネットでの人権侵害の事象が増加している今、携帯電話を巡る現状や教育現場で求められていることについてご講演いただきました。
生徒たちが簡単にブロなどを作成している様子が映像で紹介され、「便利で人とつながるための道具であるべき携帯電話が、人を傷つけ、命に関わる危険を伴うものになってきていること、サイト上の思いも寄らないところで人権侵害が起こっていることを知っておくことが必要だ」と語られました。
そして、中傷などの書き込みによって、しんどい思いをして苦しんでいる子どもに寄り添い、いっしょに解決にむけて行動することが何よりも大切であると語られました。
また、情報モラルを向上させることなどの新たな課題とともに、基本的なコミュニケーション力を身につけることなどをこれまで以上に大切にして取組を進めていくことの重要性を提起していただきました。
【アンケートから】
○インターネット上でこれだけの問題が広がった要因の一つにある「匿名性」。これは自分自身が自分の存在を消してその世界に囚われていくことに他ならない。他の人の人権を大切にする学習と同様に自己の人権を尊ぶ姿勢を子どもたちに身につけさせる必要性を強く感じた。