事業報告

2009年度 奈人教 事業報告

第56回奈人教研究大会 - 第1日 全体会

【開会行事】

開会行事開会にあたり、山本竹男会長は、「これまで同和教育・人権教育が進めてきた営みがさらに重要な役割を果たす状況となっている。
続いて天理市現地実行委員会の大嶋秀二委員長が挨拶されました。

また、来賓を代表して、奈良県教育委員会の山本吉延理事、地元天理市からは南佳策市長、北田利光市議会議長からご祝辞をいただきました。
そして、次期開催地である五條市人教の尾田義美会長より挨拶をいただきました。

その後、事務局より基調提案を行われた。
「格差」社会が深刻化する社会状況は、子どもたちの生活にも大きな影響を与え、人権教育はますます重要となってきています。
昨年の全同教大会の成功をこれからの人権教育の実践に結び、新たな歩みを進めていくことを提案されました。

【記念行事】

「ともに楽しむ心を、調べにのせて」

  • 天理市立西中学校二年 市川純也さん

市川純也さん一才の頃、白血病の影響で「視力」を失った市川さんは、その後キーボードに夢中になり、ピアノを通し音楽という新しい道を歩み出しました。

ショパンの作品から始まり、霧の噴水が顔や体にかかるのをイメージした「ミスティー・ファウンテン」、わくわくするような夢の世界をイメージした「ドリーム・ワールド」といったオリジナル曲、ジャズバージョンのベートーヴェンの作品と続き、最後は「ふるさと」でしめくくられたピアノ演奏から、彼の音楽の世界を感じとることができ、聴くものの心を打ちました。

演奏の間にお母さんの語りがあり、「この子がいるから家族が前向きな姿勢で力を合わせ、毎日楽しく過ごせている」という言葉が印象に残りました。

これからのますますの市川さんの活躍を期待したいと思います。

【特別報告】

「ハルモニの、しわ深い手が語るもの・・・」

  • 天理の夜間中学 福西由紀子さん

福西由紀子さん天理の夜間中学で約30年勤務された福西さんから、生徒に寄り添い続けた実践を報告いただきました。

その中で出会った三人のハルモニたちのそれぞれの生きざまにふれ、苦難の人生、日本と朝鮮の歴史、そして、多くのことを学んだという。それは、在日一世であるハルモニの「かぎりない優しさ」であり、「自らを解放する力」であり、「民族の誇り」であった。福西さんの聞き取りや寄り添う姿勢がこのような学びにつながり、ここに夜間中学のお互いの学びの原点があると感じました。

ハルモニたちは、夜間中学で日本の文字を学び、生活を綴る中でそれぞれの思いを語り、民族のアイデンティティを確認することになった。報告の中で実際に舞台上で作文を読んでいただいたが、その声や文字は、ハルモニたちの心の叫びでありました。

最後に、「文字も知らず、名もない市井の人たちの黙々と生きてきた歴史こそ、実は社会を支える歴史であり、大事にされなければならない」、「在日一世の人生の中に、朝鮮半島と日本の歴史が刻み込まれており、この歴史を残すことが大きな自分の課題である。」と語られ報告を終えられました。

【参加者のアンケートから】

○「 健常者」にとって、普段「音」というのは、24時間流れています。それと同様に、自分の目に映っている「風景」もそうです。作曲した「ミスティー・ファウンテン」は難しい表現だったと思います。しかし、水がかかる気持ち良さや楽しさが伝わってきました。「ドリーム・ワールド」も、市川純也さん自身の未来に対する希望や期待が強く感じることができました。

○お母さんのお話で「見えないものをどう伝えていけばよいのかと思っている」とありました。なんだかそこに私たち教員が日々向かう子どもたちにどう対していけばいいのかという共通点を見つけたように思います。

○一つ一つの曲に対して、彼がどのようなイメージを持っているのか、手に取るように伝わってきたような気がします。特に「ふるさと」は、とても優しい音色で、感動しました。

○夜間中学がハルモニたちにとって生活の一部であることがよくわかりました。作文を読まれた一言一言が重かったです。福西先生の学ぶ気持ちを私たち教師は常に忘れてはいけないと感じます。

○ハルモニの歴史の中で生きてきた歩みや苦しさを知りました。また福西さんが教師としてだけでなく、人間対人間として生徒さんと接していることがすばらしいと感じました。相手を尊重しあえる学校でうらやましい現場だと思いました。

○戦争を教える私たち教師にとって今日のお話はとても貴重なものでした。ちょうど今、六年生の担任をしていて韓国併合のところにさしかかっています。日本が過去にしてきた事実と朝鮮の人たちの気持ちを子どもたちに伝えたいと思いました。

○私たちが毎日何も思わず使っている日本語について改めて、考えさせられました。私にとって「人権」の大切さを、今まで以上に深刻に考える良い機会になったように思います。