今夏、奈同教は再来年四月の発刊をめざして、『なかま』の改訂作業に精力的に取り組んできました。編集委員のみなさんにとっては、「『なかま』づけ」の夏だったと思います。
おかげを持ちまして、教材の第一次案が整いつつある段階まできました。次号では、会員のみなさんに教材名等の紹介をしたいと考えています。ご期待ください。
さて、学校・幼稚園は、新学期を迎え、保育所も園児のみんなが顔をそろえ、いつもの活気を取り戻しています。また、多くの学校・園・所では、運動会や文化祭の準備に入り、連日、運動場で運動会の練習が行われ、「指導」の声が響き渡っています。この「指導」の声の中で、子どもの尊厳が守られているかを意識したいと思います。
ところで、1960年代後半から70年代にかけて、同和教育の取り組みの中に、「うんこ教育」という実践がありました。これは、奈良盆地の真ん中にある小学校の一人の教員の取り組みから始まったものです。
毎朝、排泄をしているかを調査してみると、部落の子どもたちの排泄率が低いことが明らかになりました。この結果から、食生活や生活習慣についての調査と改善の取り組みが行われました。
しかし、ここに留まるのではなく、食事と排泄という単純なくらしのひとこまを見つめることを通して、子ども自身に自分の「命」との出会いに気づかせたのです。「うんこ教育」は、くらしの事実を通して「命と生」に気づき・発見する取り組みでした。
先に述べた運動会の練習も、子どもたち一人一人が生きているという実感が持てる機会に、「生」が表現できるような場面になればと思います。そして、それを支援できる「指導」の声が、どの運動場にも響き渡ることを願います。子どもの尊厳を守るとは、こうしたところから始まるのだと考えます。
話は変わりますが、お盆休みを利用して、2年前に亡くなられた八ツ塚実先生の資料館を訪れました。資料館は、ご自宅の一部を改築されて、2階と3階の二部屋に、生前収集され活用された資料や教具が展示してありました。部屋の中に入ってみて、所狭しと置かれた資料や教具の多さに、ただただ驚くばかりでした。そして、一つ一つの資料に目を通すうちに、八ツ塚先生が生前力説しておられた「人間」教育は、人権教育そのものだと実感しました。