先日、台湾の日本人学校にいる同僚からメールが届きました。「私は何とか生き延びています…」から始まるメールの内容は、もちろん重症急性呼吸器症候群 (SARS)についてのことでした。世界保健機関(WHO)がまとめたSARSの患者(可能性例を含む)数は世界で8141人、うち死者は累計719人にもなるそうです。(5月26日現在)
メールによると日本人学校の近くのデパートの従業員がSARSに感染したため、今は学校が休校中とのことでした。
新聞やテレビ報道を見ていると、SARSの猛威に驚嘆するほかありません。しかし、メールの最後の一文を読んで「ドキッ」としました。そこには「子どもがいるかぎり、我々は帰れないので覚悟を決めていますが、自分でできる予防をしっかりとしていきたいと思っています。どこへ行くのにもマスクをしています。バスや電車ものらず、自分の足で行動できる範囲でしか最近は行動していません。敵は見えないですから。」と書いてありました。
SARSの報道をすごいことが起こっていると気にしながらも、どこか他人事として考えていた自分が恥ずかしく思えるとともに、もし自分がそんな状況に陥ったとき、「子どもがいる限り、覚悟を決める」ことが本当にできるのだろうかと…。
一方で、アジアからの一時帰国も問題になっています。北京ではようやく、WHOの渡航延期勧告が解除されたにもかかわらず、児童・生徒の6割近くが一時帰国したままだといいます。
台湾の日本人学校でも、クラスの3分の1くらい、全校で100人ぐらいの子どもたちが日本へ帰って行ったそうです。残った子どもたちがどのような気持ちで日々過ごしているのかが気になります。
また、台湾から帰国した子どもたちは、「(感染していないという)安全性の確認ができなければ転入は難しい」と、日本の学校への受け入れを拒否されることが起きています。自分の身を守るために台湾を出た子どもや親が、今度は日本の子どもたちの安全のために排除されるという事態が起こっているのです。
まさに「有事」、すべての子どもの人権と命を守る方途を探りたいものです。