人権エッセイ集

2003年度 アイドルトーク 02

11月号「実りの秋に」

収穫直前の果物が大量にもぎ取られたり、出荷前の米が倉庫から盗まれるなど、農作物の窃盗事件が続いています。調べによると今年1月から8月末までで 480件にのぼっていて、昨年同時期の約1.5倍だそうです。9月以降も増え続けています。冷夏の影響で米が不作だったことや、長引く不況が原因だとも言われていますが、本当のところはどうでしょうか。

食料難の時代には自分や家族が食べるためということが考えられますが、今の時代、どうもそうではないようです。都会からのレジャー客が自然に生える山菜などと区別せず畑の作物などを持ち帰ることなどもよくあります。そういう人たちには作物は手間ひまかけて育てられていることや、作る人の願いがこもっている事なども伝える必要を感じますが、それとも違うようです。

最近の事件は、田んぼの中の稲を自分で機械を操作して刈り取って持ち去ったり、なっている果物のほとんどを盗っていったりするなど、計画的で悪質です。「同業者」という見方もあります。そうだとすれば怒りと共にさらに大きなショックを感じます。お米は半年以上の期間と多くの手間をかけてやっとできることや、枝先に甘くておおきな実を結ばせるにはどれほどの工夫と苦労が必要なのか、そして育ったときの喜びなども知った上での「犯行」だからです。(もしかすれば喜びなどは感じていないのかも知れませんが・・・。)この人たちにとってこうした収穫物は、手塩にかけて育てた「作物」ではなく、売り買いされるための「商品」でしかないのかもしれません。

ところで、奈良県では少ないと思いますが、最近の子どもたちの中には栗の実が木になることや、皮やイガがあることを写真でしか知らない子がいるそうです(「皮のついていない甘栗」の普及も関係ある?)。また、ペットの小動物にしても「飼う」ものより「買う」ものというような感覚が広がっているように思います。 子どもたちには、土の感触や動植物を育てる苦労と楽しさを是非体験させたいものです。そして動物や植物を「商品」としてではなく「生き物」として、とらえさせたいと思います。育てている植物が枯れたり、飼っている小動物が死んでしまったりしたとき、「電池きれちゃった」なんて言うことのないように。同時に、働く人や労働に視点をあてた学習も、今まで以上に必要だと思います。

とは言え、「ひとの物は盗ってはいけない」という当たり前のルールは守らないと…。

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