大阪府住宅供給公社が、管理する賃貸住宅の一部で来春から「ルームシェア」を認めました。「ルームシェア」というのは、一つの賃貸住宅に複数の入居者が住み、キッチンやリビングなどを共有して暮らすことです。欧米では広く普及しているそうですが、日本ではまだ馴染みが薄く、多くの公共賃貸住宅では、基本的には夫婦や血縁関係のある家族以外の人と住むことはできません。婚約中のカップルでも結婚することが証明できないと、一緒に入居できないことがあります。それがこれからは、「家賃を折半するルームメイト形式の利用」だけでなく、同性のカップルや、結婚せずにパートナー関係にある男女も入居できるようになるそうです。高齢者どうしが共同で生活することも可能になります。
府の公社が「ルームシェア」を認めたのは、ひとつは「空き部屋」対策です。また、単身者の男女や独り暮らしの高齢者からの要望が高まるなど、時代の流れとして入居の要件が緩和されたと言われています。
いずれにしても、多様な「家庭」や「家族」の形、そして、それぞれの生き方が認められる社会へと、少しずつ進んできているような気がします。
ところで、このできごとの背景には、自分が同性愛者であることを明かしているある府議会議員の働きがありました。彼女はパートナーの女性と同居しようと住宅をさがしましたが、断られた経験をもっています。また、夫に先立たれた女性の友だちどうしなど、さまざまな形態の同居を望む人たちの存在も知り、ぜひ公社に「ルームシェア」を認めてもらいたいと考えたそうです。「性的少数者だけでなく、すべての人が生きやすい社会をつくりたい」そんな彼女の願いが、府の答弁を引き出し、地方公共団体の住宅公社としては全国で初めて「ルームシェア」が認められました。
同和問題や女性問題、「障害者」問題など、個別の人権問題に取り組むことは、当事者だけでなくすべての人が生きやすい社会をめざすことだと再確認したいと思います。