「身体障害者が横断するには、今の信号では間に合わない」という投書がきっかけとなって、ある交差点の歩行者用信号が5秒延長されたという新聞記事がありました。たった5秒のことかもしれませんが、高齢者や「障害」のある人たちにとって少しやさしい信号機となりました。この記事は、昨年度、日本新聞協会の「HAPPY NEWS」(読んで幸せになった記事)にも取り上げられました。
一方、JR福知山線の脱線事故では、会社の競争原理と経済優先の方針が重圧となって、運転士がわずか1分30秒の遅れを懸命に取り戻そうとしたことが多くの尊い命を奪うことにつながったという報道がされました。
この二つの出来事は、時間と人との関係が相反する結果を生んだニュースであるともいえます。時間に追われている今の社会の在り方が問われています。ところで小学校6年生がこんな詩を書いています。
〈お母さんに停止ボタン〉
「はやく宿題しなさい」
「はやくお風呂にはいりなさい」
「はやくねなさい」
いっつも いっつも 急いでいる
〈お母さんは早送り〉
そんなに速いと 目がまわるよ 私
お母さん たまには 停止ボタン使ってよ
家庭でゆっくりする間もない子どもの姿が浮かんできますが、学校でも「はやくしなさい」「○分までに仕上げましょう」という言葉で子どもたちを急かせる場面がかなりあります。時間を守ること、時間を有効に使うことは大切です。でも、「はやく」という言葉が子どもたちにどう伝わっているのかを私たち自身が一度立ち止まって考える必要があるように思います。
「早くできた人から遊んでいいよ」と言われたとき、子どもは自分のことで精一杯になりがちです。でも、「早くできた人は困ってる友だちを手伝ってあげてね」と言われたときはどうでしょう。
また、子どもたちは、廊下ですれ違った時の先生からの一言で、ホッとしたり、笑顔になったりします。
忙しい一日の中、たとえ少しの時間であっても、子どもを幸せにする関わり方があるのではないかと思います。
今年も残り少なくなりました。今年は教室の中で「HAPPY NEWS」はたくさん生まれたでしょうか。