小学校3年生の算数の時間。多くの子が元気よく挙手する中、一人の女の子が自信なさそうに右手を挙げました.。「Aちゃん。」担任がすかさずその子を指名しました。彼女は、あまり大きくはないけれどはっきりと聞こえる声で発表しました。
「がんばったなあ、Aちゃん。入学してから一番しっかり発表できた。今日は『発表記念日』にしよう。」と、担任が言うと、まわりの子どもたちが拍手しました。
このことがあってから、Aちゃんは授業中に手を挙げることが増えました。また、徐々に発言する声にも力がこもってきました。
授業中はほとんど発言しなかった彼女が、担任の先生にしっかりと見つめられているという実感と学級のなかまの支えの中で自信を持ちはじめたことがわかります。でももっとすごいと思ったのは、この『発表記念日』が3年生の教室でのできごとだったからです。
彼女が「家ではよく話すのに、教室ではほとんど発言しない」ことは、1年生のときの担任から2年生の担任へ、そして今年の担任へと引き継がれてきました。こうした取組があってこそのできごとだと思います。さらに「発言しない」ということがただその子の「実態」として伝えられるのではなくて「いつかは教室でしっかりと発言させたい。」という方向性をもった教師の「願い」として引き継がれたからだと思います。
子どもたちの実態交流の場や、学年間・校種間の引継ぎでは「子どもたちの日々の姿」を具体的に伝えるとともに、教職員・保育士の「願い」を添えて伝えていきたいと思います。