大手百貨店の大阪進出を新聞記事(9月22日付朝日1面)は、「似てきたね東西の装い」という見出しで伝えました。首都圏を中心に事業展開してきたこの百貨店は、「雑誌やテレビで全国均一化が進み、東西の若者に嗜好の違いはなくなった」と判断し、今回オープンした難波店では、東京と同じ商品戦略を採るということです。どこでも同じものが、同じ時期に、同じ値段で買えるようになることはいいことだと思います。でも、個人の好みが同質化・均一化していくことには少し不安を感じます。
というのは、以前読んだ金森努さん(マーケティング会社社長)が書かれたコラムの中に、次のような話があったからです。一つは、最近、「丸ごと購入」といって、ファッション雑誌の切抜きを店員に見せ、「これと同じコーディネートを一式ください」と丸ごと買っていく若者が増えているという話です。もう一つは、ある商品が有名なファッション雑誌などで取り上げられると、凄まじい勢いで問い合わせや来店が相次ぐ「われもわれも現象」です。これらは、自分で好きなものを選ぶのではなく、「雑誌にのっているから」「みんなが欲しがるものだから」という安心感を求める行為のように思われます。
こうしたことがどんどん進んで、服装がよく似てくるだけではなく、いろんな場面で、「みんなと同じようにしていれば安心だ」と思う人が増えていかないかと危惧します。同質化・均一化は、一人一人の個性が失われるとともに、時として、まわりと少し「違うもの」を排除することにもつながっていきます。「みんなと同じ」を求めるこのような行動が、結果として、社会においても子どもたちの集団においても、「誰か」を生きにくくしてはいないでしょうか。