人権エッセイ集

2006年度 アイドルトーク 02

1月号「感 動」

最近感動したことの一つめは、ある中学校に行ったときのこと。この学校でも鉄製の大きな校門が閉められていました。車で門に近づくと中からジャージ姿の男子生徒が数人寄ってきました。「こんにちは」と、向こうから元気な挨拶。「こんにちは」と返すと、「開けますから」と言って、車を通してくれました。その後は、校門をきちんと閉めてくれました。車をとめて振り返ると、小さく会釈する姿が見えました。この一連の態度があまりに自然ですがすがしいものだったので、とても心に残りました。

二つめは小学校の運動会での一場面。6年生の4色対抗リレーが始まりました。一人半周ずつで、全員が走ります。見ていると、何人めかの子の靴が片方脱げました。少し走るともう片方も脱げてしまいましたが、その子はかまわずに走り続けています。靴はトラック上に散らばっています。すると、すでに走り終えていた一人の男の子が靴を拾いに行き、その靴を「持ち主」の子が走り終えるあたりへともって行きました。そして、トラックの内側に一足をきちんと揃えて置いたのです。6年のリレーといえば、運動会の見せ場のひとつです。子どもたちも参観者も白熱するこの場面で、友だちの靴を丁寧に揃えて置く姿に感動しました。

三つめは、『なかま』低学年の「かお」の授業の時のことです。「みんながこんな顔になったときのことを話してください」という教師の問いかけに答えて、子どもたちが話し始めました。「誕生日にゲームを買ってもらってうれしかったです」「日曜日にお父さんに遊園地に連れて行ってもらって楽しかったです」という発言の後、「○○を買ってもらった」「××に連れて行ってもらった」という話ばかりになっていきました。今の子どもたちのうれしいことってこんなことかと少しがっかりしていました。でも授業者は、「日曜日に遊園地に行ったと発言したAが、幼稚園の時から別居している父親のことをみんなの前で話したのは初めてです。これをきっかけに、Aが自分のくらしをしっかりとみつめていけるように取り組んでいきます」と授業後に話してくれました。子どもの短い発言から気もちを読み取る授業者の感覚と日頃の深いかかわりに感動しました。

今、教育・保育をめぐっては課題が山積しています。でも、このような多くの感動があるのも教育・保育の現場です。子どものくらしやさまざまな出会いを通して、私たち自身が感動する心を持ち続けたいと思います。

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