ある日曜日、自分が数十年前に卒業した小学校の前を通りがかると、運動場に40人ほどの姿が見えました。この小学校は数年前から廃校となっていたはずなので、不思議に思い、しばらく見ていました。すると、どうも運動会をやっているようなのです。しかも、3才ぐらいの子どもから、かなり年配と思われる人までが参加しています。近づいて聞いてみると「校区民運動会」だということが分かりました。小学校がなくなった今でも「校区」としての単位でこんな行事が開催されていることにおどろきました。
そういえば自分が小学生の頃は学校の運動会と校区民運動会が合同で開催され、保護者だけではなく地域の人たちが大勢参加してくれたことを思い出しました。準備や片付けも一緒にしていたように思います。
学校はこういう人たちに支えられてきたんだなあと思うと同時に、地域の人たちにとっても学校は大切な場所だったんだと改めて感じました。
ところで、近年学校間の競争によって「学力」を向上させ、「特色ある学校づくり」を進めようとする「学校選択制度」が都市部を中心に広がってきました。ある自治体の保護者向け案内に次のような文章を見つけました。
「選択制度は、選択の自由と同時に選択責任を求める制度です。保護者の方々には、学区域内・外を問わず、みなさん平等に学校や地域と協働して教育の充実を進める義務があります。学校の行事やPTA活動にみなさん積極的に協力をしていただきます」
「学校に他学区の子どもが増え、地域の学校という意識が薄くなった」というのはすでに「学校選択制度」が導入されている地区の保護者の声です。「歩いて通い、地域の人たちと一緒に過ごすことが目に見えない力になる。選択制は、ふるさとを大事にする気持ちを失わせてしまうのでは」というのは、ある小学校長の言葉です。
教育現場に向けて提案されるさまざまな取組を、「地域や保護者との関係を深めていくことになるのかどうか」という視点で見ていくことも大切なことだと思います。