人権エッセイ集

2009年度 アイドルトーク 02

3月号「聴くこと、話すこと、つながること」

人権教育の研修会などに行くと「子ども一人一人を大事にする」「保護者の思いを聴く」ということをよく耳にします。しかし、トイレに行く時間もないぐらい忙しい現場の一日を振り返ると、子ども一人一人を大事にするとはほど遠い自分の姿を思いかえしたりします。

若かりし頃、家庭訪問に行って何を話していいのかわからず、昨夜見たテレビの話や、アイドルの話ばかりして本当に言いたかった子どもの話をせずに帰り、自己嫌悪に陥ったことがあります。学校に戻り先輩にそのことを話すと、「そんでええねん、子どもかって遊びでつながるやろ、おとなも一緒やで、人はしんどいことでつながられへん。遊びでつながるんや。」という言葉がかえってきました。今、その時の先輩の一言をことあるごとに思い出します。

子どもが何か問題行動を起こした時だけ保護者と話をするというのでは本当につながることはできません。その子の育ちや学校以外での姿を、日ごろから話すことの大切さを当時の先輩は教えてくれたように思います。かつて「くつべらし」と言われた家庭訪問は何よりつながりづくりの取組でもありました。

「この先生になら言える、聴いてもらえる」と保護者に思ってもらえる教師は、子ども一人一人のことをよく見ている人ではないでしょうか。どんな時にも膝をつきあわせて話ができる教師には、「モンスターペアレント」という言葉は存在しないのではないでしょうか。

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