東京都教委が、都内の小学生4030人、中学生2855人、高校生5855人を対象に、自尊感情や自己肯定感をテーマにしたアンケートを行った結果、中高生の5~6割が「自分」を好意的にとらえていないという記事が新聞に載っていました。
以前、ある学校で『なかま』の「ほめほめぶくろ」の授業を見せていただいた時のことです。教室に「ほめほめポスト」という箱がおいてあり、子どもたちがクラスのみんなのいいトコを見つけて書いて入れるという取組で、その日はそのポストをあけて、読み合うという授業でした。
そのクラスにすごく愛想の良い男の子がいて、「どこから来たん?」「どこの学校の先生!?」などと、とにかくうれしそうに話しかけてくれました。その明るかった子がいざ授業が始まりしばらくすると、シュンと下を向いて元気がありません。(ほめほめポストからたくさん紙をもらっていたのにどうしたのかなぁ)と少し気になって聞いてみると、「これは先生の字や、ボクの良いトコは無いんや」と言いました。
あとの研究協議で聞いたのですが、やはりその子へのものは、先生が書いたものしかなかったそうです。その子は明るくて、給食も好き嫌いせずたくさん食べ、学習もよくできるとは言えないけれど、何でも一生懸命やるそうです。先生は、「どうしてこの子の良いところ、みんな気がつかないのかなぁ」と言っておられました。
今の子どもたちは小さい頃から、いつも誰かと比べられたり、テストで評価されたりしています。もしかしたらほめられるのは、テストで良い点を取ったとき、習い事の級が上がったとき…といったことばかりなのかもしれません。
学校生活においても、ついつい私たちは子どもが宿題を忘れたり、当番や日直の仕事をしないで遊びに行ったことばかりに目がいってしまいます。そして「できない」ことを正そうとするあまり、子どもたちの良いところをついつい見逃してしまうことがないでしょうか。ドロシー・ロー・ノルトの『子どもが育つ魔法の言葉』の中で「認めてあげれば、子どもは自分が好きになる」、「しかりつけてばかりいると子どもは『自分は悪い子なんだ』と思ってしまう」という一文があります。自分をかけがえのない存在として認める大切さを子どもたちに伝えるには、日常から子どもたちの意欲やがんばりを認めたり、一人一人が自分の思いを充分出せる環境づくりが大切です。
学校・園・所はもちろん、子どもたちが生活するすべての空間がそのような「空気」でいっぱいになっているかを点検してみましょう。