人権エッセイ集

2010年度 あいどるとおく

9月号「喉もと過ぎてもあたたかさは続く」

今年の夏はことのほか暑さが厳しく、連日のように猛暑日が記録されました。
「いつになったら過ごしやすくなることやら……」
といった会話を人と会うたびに交わしている中、
「春先は寒くて冷夏になるかなんて言ってたのにね」
と言われてドキッ。

奈良地方気象台の天気概況によると、五月から六月にかけては平均気温が例年より低かったと報告されています。
「少しひんやり衣替え」といったニュースの見出しさえありました。

そんなことをすっかり忘れ、「早く涼しくならんかな」なんて思っている身勝手な自分に思わず苦笑してしまいました。

そんなこの夏、多くの研修会でたくさんの人たち、とりわけ若い先生たちと出会えました。

そこで感じたのは、最近の若い方々はたいへんまじめだなあということ。
ある研修会では運営側の私たちが到着する前から会場に来られている方も。
アンケートもびっしりと記入してくださる方がほとんど。
自分の若い頃はもっとちゃらんぽらんだったなあと反省することしきりでした。

そんな私がまだ学生だった頃、事情でとある学校の教壇に立つことに……。

初体験の一時間目の授業中。
頭の中が真っ白になりながら進めていると、突然教室の後ろの扉から校長先生が入ってこられました。
大きな目で私の方をジロリと見た後、しばらくして出て行かれました。

授業が終わり、職員室に戻った私は校長室に呼ばれました。
「何かまずかったんかな」と内心びくついている私に、校長先生は白チョークと赤チョークの使い分けから板書のまとめ方、「授業を大切にすることは子どもを大切にすること」など、たっぷりと時間をかけ、ていねいに教えてくださいました。
半分学生という中途半端な私を何とか一人前に育ててやろうというあたたかさがひしひしと伝わってきました。

二十五年経った今、その時教えていただいたことと校長先生のあたたかさは、私の中でまだまだ熱を保っています。

この夏の暑さの中、今度は自分がそのあたたかさを伝えていく番だという思いが「つながり」始めました。

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