人権エッセイ集

2011年度 あいどるとおく

5月号「今、子どもたちは?」

三月十一日に発生した巨大地震は一瞬にして多くの人々の尊い命を奪い、くらしを破壊しました。
私たちは、大自然がもたらす脅威を前にした人間の存在やその営みのもろさとはかなさを嫌というほど思い知らされました。

また、その後発生した福島第一原子力発電所の事故は、被災者のみならず世界中の人々に至るまでを目には見えない放射能汚染という恐怖に陥れています。

そんな中、日本に暮らす人々を支える様々な言葉や行動があります。
先日他界されたプロゴルファーのセベ・バレステロスさんは「JAPAN, IM WITH YOU(日本、私はあなたとある)」というメッセージを送ってくれていました。

痛んでいる人にとってそばにそっといてくれる人が存在するということがどれほどありがたいかを私たちは知っています。
同時に、「困っている人がいたら放ってはおけない」「この地球に生きるものとして共に幸せになりたい」という思いは、本来、人としてだれもがもっているもののような気がします。
そんな思いや行動はこうした危機的状況下においてだけでなく、ありきたりの日常の中でも当然至極の振る舞いとして現れるべきものです。

ところで、最近、気になる事件がありました。
ウサマ・ビンラディン氏の殺害です。
彼の犯した罪がどのようなものであったのかということについての真実は明らかにされないまま、一人の人間の死について喜んだりその殺害を讃えたりする人の姿が報道されていることに違和感を覚える人も少なくありません。
「人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない」という「世界人権宣言」の理念はどこへ行ったのでしょう?
「巡り会って
そして愛し合って
許し合って僕らはつながってゆくんだ」という歌のように、互いを愛することのさらにもう一つ向こうにある許し合うということを私たち自身どれだけできているでしょう?
そんな私たちの姿から、子どもたちは何を見聞きし、どんなことを感じているでしょう?
その子どもたちが成人したとき、世界はどうなっているのでしょう?
「今、子どもたちは?」
その姿を、くらしぶりも含めてありのままに見つめることから今年度も取り組んでいきたいと思います。

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