人権エッセイ集

2013年度 あいどるとおく

6月号「子どものくらしを見つめる」

2009年の日本の「子どもの貧困率」(貧困ラインを下回る世帯に属する17歳以下の子どもの割合)は15.7%で、ひとり親家庭においては50.8%にも達している。15.7%ということは7人に1人の子どもは貧困状況に置かれているということであり、40人のクラスであれば実に6人にも上る。
 

このような状況を改善しようと、5月18日(土)に、「子どもの貧困対策法」制定を求める集会が、東京の代々木公園でひとり親世帯の若者ら約500人が参加し開かれた。国会議員らも出席したという。
 

一方で、生活保護に関する2法案が5月17日(金)に閣議決定された。生活保護法の改正案では、申請時に資産や収入、扶養義務者の状況などを、書面で届けることになった。生活保護申請のハードルを上げ、不正受給への対処という面もあるのかもしれないが、本当に必要な人が保護を受けられない事態をまねかないか心配される。
 

話は前後するが、5月4日(土)の朝日新聞朝刊に「ユーチューブ」で公開されている「貧困を背負って生きる子どもたち 仁(じん)の物語」に関する記事が載っていた。この動画は、ひとり親の生活保護家庭で生きる仁と、仁をサポートする人たちの姿を、仁の語り口調で書かれた短文と写真と音楽で伝えている。不登校、母の心の病気、まわりの人からの心ない言葉、しんどい生活の中で孤立していく仁が、サポートしてくれた人たちとのかかわりの中で心を開き進路を切り拓いていく。
 

この物語は、NPО法人「山科醍醐こどものひろば」によって制作された。物語はフィクションであるが、実際に同法人の事業を利用した子どものエピソードをつなぎ合わせて作られたそうだ。
 

仁のくらしとこれまで自分がかかわってきた子どもたちのくらしを重ねながら見た。そして、今目の前にいる子どもたちのくらしの現実がどこまで見えているだろうかと考えた。子どもたち一人一人それぞれに、思いや願いをもって学校・園・所にやってくる。そうした子どもたちの思いや願いに寄り添える人でありたいと考えながら、「差別の現実に深く学ぶ」という言葉を改めてかみしめている。

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