ある日、「グンカン、グンカン、チーンボツ」「チンボツ、チンボツ、ハーレツ」 のかけ声が聞こえてきました。このかけ声、「じゃんけんのことか」と連想できましたか。実は、「グンカン」は軍艦でグー、「チーンボツ」は沈没でチョキ、「ハーレツ」は破裂でパーを意味します。年齢的なことや地域的なこともあるかもしれませんが、「そうそう、やったことある」と思われた方も少なくないと思います。オリジナルのじゃんけんは、最初のかけ声は、「セーンソ」で始め、「グンカン、チョウセン、ハワイ」だそうです。このじゃんけんは、軍艦じゃんけんと呼ばれ、その起源はおそらく戦中だと推測されます。子どもたちの遊びやゲームに、「バクダンゲーム」…。気にしなければ通り過ぎるゲーム名ですが、いかがでしょうか。
ところで、年明けの1月20日。二人の日本人を人質にし、身の代金を要求する映像がインターネットで配信されました。その後、二人の命が奪われたことは、周知のとおりです。残忍な行為の上尊い命を奪われるという結果になったことに、強い憤りを覚えます。
あるテレビ番組で、「(後藤健二さんは)戦争になったり、紛争が起きたりすると弱い立場の人がそれに巻き込まれて、つらい思いをするということを、一番伝えたかったのではないか。それを考えることが、ある意味で言うと、こういった事件を今後、繰り返さないための糸口が見えるかもしれない。」という趣旨のコメントに接しました。21世紀になっても、世界の様々な所で繰り返される紛争やテロで、何千人、何万人もの人々の命が奪われ、多くの難民が出ているという報道が絶えません。こうした数字だけの報道に、心を動かし、犠牲になった人々の人生が、家族が、関係者がいることに、私たちは今回の人質事件同様に、無事を祈りながら固唾をのんで事態の推移を心配してきたでしょうか。
かつて日本の首相が、「人の命は地球より重い」というメッセージを発したことを思い出します。この言葉の重みを噛みしめたいと思います。今後、暴力の連鎖が続き、勇ましい言葉とともにあらぬ方向に日本が進むことが一番危惧されます。
ある調査で、戦争体験した人々は年々少なくなり、戦後生まれが8割を超えたことや、20代の6割が戦争体験談を聞いたことがないという数値もあります。戦争体験の風化が心配されますが、一方で戦争を知らない世代が増えることは、それだけ平和が続いてきたという証です。ある女優が「いつまでも『戦後』と言い続けられる日本であることを願います。」と語られています。
戦争は、人々が知らない間に準備され、始まる時にはもう止められないものであることを、歴史は教えてくれます。そうならないためにも、子どもたちのじゃんけんが、勝ち負けにこだわらない「あいこじゃんけん。じゃんけんぽん。」の「あいこじゃんけん」の広まりを期待します。