ある小学校の先生からこんな話を聞きました。ノートを返却したら、子どもから「先生、花まる上手やなあ」と言われたそうです。先生は思わず吹き出しながらも「ありがとう」と答えました。「子どもに花まるを褒められるとは思わなかったです。認めることの大切さを子どもに教えられました」とベテランの先生はそう話されました。また、算数が苦手な子のプリントを採点していたら、ほとんど間違えていて、正解はたった一問だけ。でも先生はその一問に花まるをつけました。めったに貰えなかった花まるを見た子は「やったー」「大きくなったら先生になる」とスキップして戻っていったそうです。
この話を聞いて、私が小学校一年生だった頃の遠い記憶が蘇りました。図工で先生をモデルに絵の具で描いた時の事です。「よく見て、色を混ぜて」と言われたことを守り、皺の一つ一つを見逃さず描きました。夢中で何色も混ぜ、塗っていると「うわー」と友だちが叫んでいます。かびのような色で皺だらけの顔になっていました。「しまった、叱られる」と思っていると、先生は「よう、がんばったなあ。しっかり見て、色を上手に混ぜて描いたなあ」と褒めてくれたのです。マイナスをプラスに転換してくれた先生の言葉で、私は絵を描くことが大好きになりました。出来栄えだけでなく、その過程を見てくれた先生のことが大好きになりました。振り返ってみると、教員の道を選んだ原点かもしれません。
さて、昨年度の『なかま』実践研究集会で奈良少年刑務所の社会性涵養プログラムに携わった松村洋介さんは、「加害者となり刑に服している少年たちの規範意識は過剰にあるのです。こうでなければならない、でも自分はそうではない、だから自分はだめだと思ってしまっているのです。周りから否定され続け、自尊感情を削られ育ってきた子が多いのです」「その子のことを認め、受けとめてくれるおとなが人生の中で一人でもいたら」と語られました。