人権エッセイ集

2017年度 あいどるとおく

10月号「権利と責任」

「日本中の、学校に行きたくない子どもに言いたい。死にたくなるぐらいの気持ちがあるのなら絶対に学校に行くな!」

今年何かと話題になった文科省前事務次官のMさんが、8月に宮城県南三陸町で行われた高校生対象の講演会でこう呼びかけました。
 

1年の中でも18歳以下の自死者数が突出して多くなる9月1日を前に、Mさんは高校生との質疑応答でこう続けます。「学校に行って死にたくなるくらいの思いをするのなら、絶対に学校に行くべきではない。自分の命が絶対に大事なのであって、命よりも学校に行くことを優先する考え方はまったく馬鹿げています。義務教育の『義務』というのは、親のほうの義務なのです。(中略)子どもは権利者なのです。『すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する(憲法第26条)』とある。子どもは権利者なので、これを学習権と呼んでいるわけです。」このことは、ぜひ子どもたちと学び合いたいと思いました。

『権利』について少し考えてみましょう。一般的に『権利』の対義語は『義務』とされています。「自分の権利を主張するなら、義務も果たしなさい」という声を聞いたことがありますし、もしかしたら自分も子どもたちに言ったことがあるかも知れません。また「子どもが権利ばかりを主張すると、集団の運営がうまくいかなくなるのではないか」と危惧する先生の声を聞いたこともあります。自分の権利と他者の権利が対立することがあります。その結果、一方の権利が押し通されて、マイノリティの人たちの権利が阻害されるようなことにならないかと思うこともあります。
 

そんな時『権利』の対義語を『責任』ととらえてみてはと先輩に教えてもらいました。そう考えると、自分の権利を引っ込めるのではなく、また押し通すのでもなく、うまく行使することを学ぶ機会ととらえることができます。また、他者の権利を尊重し、それと調整していく責任を負うことを学ぶことができます。人権教育の深い学びは、こういうところからも始まるのだと思いました。

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