私に人とは違う色覚の特性があると知ったのは、小学生の低学年の頃だったと思う。色覚に関わるエピソードは鮮明に覚えている。小学校4年の時、授業で写生をした。自分ではうまくできたと思い、担任の先生に見てもらいに行った。周りのみんなもその絵を先生と一緒に見て、「おまえの絵、間違ってる。変やわー」とはやしたてた。絵に上手、下手はあっても間違っている絵があることを知った。先生の首をかしげて私の絵を見るその表情や目の動きまで、40年経った今でも覚えている。教師の一言やまなざしって怖いなと今教師となっても心に刻んでいる。その頃から自分に人とは違う色覚の特性があるということを周りに知られることを、ひどく恐れるようになった。
色覚特性を持つ人は(男性で約5%、女性で約0.2%)男性の20人に1人の割合でいるという。私の場合、日常生活で苦労することはほとんどなかったが、学校の黒板の赤色のチョークは見えにくく、美術の時間や社会の地図帳、理科の実験など、色で識別しなくてはならないことがいくつもあった。
2001年に労働安全衛生規則が改正され、雇入時の健康診断の項目から、色覚検査が削除された。「色覚検査において異常と判別される者であっても、大半は支障なく業務を行うことが可能であることが明らかになってきている」などが理由だ。
2003年、学校における色覚検査も必須検査から削除された。しかし、2015年、文科省は通知を出し多くの学校で希望を取り検査を再開させた。検査の結果、「あなたには色覚特性があります。世の中に色覚特性に対する差別があるみたいなんだけど、がんばってね」というようなことになってはいないか。当事者に下を向かせてはいけない。その課題についてどれほど知っているのか、どう向き合っているのか、教職員の立つ位置が問われている。
社会は多様性に満ちている。色覚特性だけでなく、多様な子どもが学校にいるという前提でインクルーシブな学校づくりを進めていきたい。