人権エッセイ集

2019年度 あいどるとおく

6月号「青春」

「なぜ青春は青いの?」

先日のNHKの『チコちゃんに叱られる』で出された問題である。見られた方もいると思う。その答えは「春は青だと決まっているから」と、何とも素っ気ないものであったが、その根源に中国から伝わった陰陽五行(いんようごぎょう)思想があると聞き、詳しく知りたいと思った。
 

番組では、この世のすべてのものが「木火土金水」からなり、それに「青赤黄白黒」という色や季節、人の生涯を結びつける五行思想を中心に紹介していた。つまり、「木=青=春=15~29歳」「火=赤(朱)=夏=30~44歳」「金=白=秋=45~64歳」「水=黒(玄)=冬=65歳以降」となる。土は中央であり、季節の変わり目『土用』だそうだ。なるほど、青春以外にも、朱夏、白秋、玄冬という言葉を聞いたことがある。さらに調べてみると、方位や時刻、暦などとも結びついていることがわかってきた。キトラ古墳の壁画では、北の方位を玄武が守っている。東に青龍、南に朱雀、西に白虎。なるほどここからきているのか。そういえば、こいのぼりの吹き流しもやはりこの5色だし、大相撲の土俵には、(土を表す黄以外の)4色のふさが垂れ下がっている。
 

五行思想の木火土金水が、さらに陰と陽に分かれると、「きのえ(木の兄)」や「みずのと(水の弟)」などの十干(じっかん)になり、そこに十二支が加わることで干支となり暦にもよく使われている。1924年「甲子(きのえね)の年」に起工したことで甲子園球場と名付けられたのは有名な話である。歴史上の出来事にも「乙巳(いっし=きのとみ)の変」「壬申(じんしん=みずのえさる)の乱」「辛亥(しんがい=かのとい)革命」などその年の干支を使ったものがいくつも見受けられる。
 

陰陽五行思想は、古代中国からもたらされ、日本で独自の発展を遂げた。今も私たちの生活のそこかしこに息づいているものも多い。その中にはたとえば「丙午(ひのえうま)」の問題のように、人の心が傷つけられたり、人生に不利益が生じたりしてきたものもある。奈人教の人権教育テキスト『なかま(高学年)』には「迷信や言い習わしを調べてみよう」という教材がある。あらためて子どもたちと一緒に考えてみてはどうだろうか。私たち自身が知らず知らずのうちに信じるべき根拠のない“迷信”に囚われ、「ボーッと生きてんじゃねえよ!」と言われぬように。

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