2020年を表す言葉の筆頭は、間違いなく「新型コロナウイルス」になるだろうと思いますが、「Black Lives Matter(BLM)運動」もまた今年を表す大切な言葉の一つです。5月にアメリカで起きた「白人警官による黒人殺害事件」をきっかけにしたこの運動については、全米オープンテニスで大坂なおみ選手が抗議の意思を表したマスクを着けて試合に臨んでいた姿も記憶に新しいところです。
「Black Lives Matter」は「黒人の命は大切」と日本語訳されることが多いのですが、その訳し方にもさまざま論議があります。「黒人の命は」ではなく「黒人の命も」や「黒人の命こそ」と訳すべきであるとの考え方もあります。こうした今回のニュースを見て、「アメリカって大変だな」「白人でも黒人でもないアジア人には関係ない」と思った人がいるかもしれませんが、果たしてそうでしょうか。
「白人の特権(White Privilege)」という言葉があります。白人として生まれたことにより白人が生まれながらにもっている特権のことです。例えば「雇用の際、同等のスキルをもつ黒人と白人がいれば白人が採用される」や「何か問題が起こったら、白人ではなく黒人が最初に疑われる」「部屋を借りる時には黒人よりも白人が優遇される」などがあります。この「白人」を「日本人」に、「黒人」を「外国人」に置き換えてみると、日本にもいたるところで確実に人種差別と同様の外国人差別が存在していることに気づかされます。
その日本では、1999年に国内文具メーカーのP社が、クレヨンの「はだ色」を「ペールオレンジ」に改めました。そして翌年には他のメーカーも「うすだいだい」に改めています。当時の担当者は、「国際的な感覚は大事ですし、お客様が不快に思うものを作るわけにはいきません」と話し、人種差別撤廃への取組を進めています。こうして色の呼び方が変わったのは、もう20年以上も前のことなのに、今でも「はだ色」と無感覚に使ってしまう自分に気づき、はっとすることがあります。何も差別的な意味合いで使っているわけではないのだからと言う方もおられるでしょうが、このことでつらい思いを感じた人がいると思うと、日常の何気ない「当たり前」にも、一旦立ち止まって考える意識をもちたいと思います。