事業報告

第60回全国人権・同和教育研究大会 地元報告の概要

奈良県からは、特別報告と分科会報告、あわせて25本の実践報告を行います。 これまで奈良の地で培った実践を全国に発信するとともに、全国から寄せられる報告をもとに各分科会で建設的な討議を進め、意義のある大会となるよう、より多くのみなさんの積極的な参加をお願いしたいと思います。

特別報告

一人一人の子どもが大事、すきやねん。~1年めの出会いを心にとめて~

広陵町立広陵西小学校 森下 和恵さん

教師になって3年め。校舎裏で大粒の涙を流しているBをみつけた。「ごめんね、先生Bにいてほしいねん。ひとりにしてごめんね」という言葉が自分の中からすっと出た。1年めのAとの出会いがなかったら、こうはいかなかっただろう。
…教師1年め、「子どもの目線に立って考えられる教師になろう」という思いを何度も忘れそうになっている自分がいた。そんな自分に気づかせてくれたのが、初めて学級担任として出会ったAや学級の子どもたちだった。子どもに育てられ、共に学んだ歩みについて報告したい。

第1分科会 人権確立をめざす教育内容の創造

しぜんっていいな。ともだちっていいな。

葛城市立新庄北小学校附属幼稚園 谷口 雅子さん

4歳児は小動物を捕まえ、身近におくのが好きである。しかしそれは、命の問題に向き合う機会となる。命についての話し合いを軸としながら考え合い、行動する中で、人に対する思いやりも育もうとした様子を報告したい。

つながりあって ハッピー ~子どもどうしが協働しながら追究する姿をめざして~

桜井市立纒向小学校 北口 米美さん

4月当初、一見穏やかな学級であったが、Aは周りから疎外され、A自身も自分からなかまに入ろうとはしていなかった。そんな子どもたちが、授業の中で、教材と向き合い、自分自身と向き合い語り始めた。そして、本音で語り合う中で、Aの居場所が確かなものになっていった。

「みつめよう!〈くらし・自分の成長〉」人々の幸せを願って ~全国水平社と西光万吉~

橿原市立新沢小学校 竹中 基展さん

「全国水平社と西光万吉」の学習を進めていくなかで、クラスの課題として浮かびあがってきた「Aに対するいじめ」と子どもたちとを向き合わせた。そして「いつも太陽のように」の歌を通して、子どもたちが自分自身の差別性と向き合い考えた姿を中心に報告する。

一人じゃない.めざせ! ~希望と勇気がつまった笑顔あふれる友だち思いの6の3~

大和高田市立高田小学校(現 陵西小学校) 松田 幸代さん

「4年間ずっと一人で生きてきた」と語るAについての話し合いの中で、学級の子どもたちが自分のしんどいことやつらいことを言わずにはおれないという思いで次々と語り始めた。そして本当のなかまとしての新たな出発の日となった。

げんきいっぱい・えがおいっぱい・ともだちいっぱい ~いのちが深く出会うとき~

御所市立掖上小学校 堀内 よし子さん

真新しいランドセルにいろんな想いをつめ込んで入ってくる27人。そんな子どもたちのつぶやきを大事に、子どもたちの心の動きを話し言葉から書き言葉へ…。どの子もありのままに自分が出せ、それを受けとめられるなかま集団をめざして取り組んだ。

たすけ はげまし 学ばなん ~先達のおもいに学び、自らの生き方を探る~

上牧町立上牧小学校 内田 澄子さん

校区に被差別部落のある学校として、上牧の歴史・地域にこだわり、地域に愛着をもつことができるなかみをどのように積み上げてきたのか、6年生の部落問題学習を中心に、子どもたちの姿を通して伝えたい。

みんなの中の私 「わたしのけんこうにっき」 ~保健室からの発信~

奈良市立富雄中学校 木原 美佐恵さん

学歴偏重の波に翻弄され、時間に追われた生活の中で、自分自身や周りとのつながりを見失っている子どもたち。そんな子どもたちが自分を大切にし、何事にも意欲をもって取り組めるよう、心身の土台を築くべく全校ではじめた「けんこうにっき」について報告します。

A君といっしょに ~全校友だちいっぱい集会・2年の取り組みから~

桜井市立三輪小学校 山口 由加さん 泰山 郁子さん 林 宏美さん

1年生の9月に中国から来たAは、現在4年生。当時は日本語が全く理解できず、不安でいっぱいでした。友だちや担任、日本語指導の先生、多くの教師と出会う中で、少しずつ日本語を覚え、友だちとつながり合っていった様子を、全校集会や1・2年の取り組みを中心に報告します。

「表現の世界に壁はない」 ~ろう学校演劇部の取り組みについて~

奈良県立ろう学校高等部 綿井 朋子さん 北門 英美さん

本校の演劇部活動を通して、課題のある子どもたちがどのように変わっていったのかを、活動に取り組むようになった理由から部結成、各大会出場に至るまでの8年間、さらに活動で生徒が感じたことや周りの人たちの感想を含め報告します。

第2分科会 自主活動

伝われ!わたしたちの思い ~なかま学級の活動をふりかえって~

御杖村立御杖小学校 鈴木 泰弘さん

「同和教育補充学級」のあとを受けて、「人権」「ふれあい」「伝え合い」をキーワードに、子どもたちの発想を大切にしながら活動するなかま学級について報告する。

「ありがとう。そしてまた会おう」 ~本校解放研の取り組み~

奈良県立山辺高校 片山 周二さん

奈良県唯一の総合学科高校である本校には、様々な課題を持つ生徒が多く、解放研もそうした生徒が集まっている。そうした生徒が校内外の活動で成長していった様子について報告する。

第3分科会 進路・学力保障

東市リバイバルプラン ~子どもの「確かな学力」の定着を図るために~

奈良市立東市小学校 十亀 宏太さん

将来に展望をもち、社会に出てたくましく生きる子どもになることを願い行ってきた学校改革「東市リバイバルプラン」の概要と、その改革を実践していく中で関わっていった子どもやその保護者の変化について報告する。

将来への展望ある進路をつかむために ~自らを語りきることから生まれる絆~

御所市立大正中学校 石本 智子さん

人の話を集中して聞くことが苦手な生徒たち。しかし教師やなかまの「第一声」では驚くほど集中して聞いている。教師が自分のことを語りきることで、子どもたちも「自分のことを語る」大切さに気づき、そのきっかけにしてくれている。自分の思いを伝え、つながり、強い「絆」のもとで、忘れられない卒業式を迎えることができた、子どもたちについて報告します。

「心配してくれる人がいると思うからやで」 ~帰国生係になって~

奈良県立高取国際高校 長岡 伸好さん

本校は奈良県でも数少ない、特別措置によって帰国生徒等を受け入れている学校のひとつである。海外にルーツを持つ生徒がどのように学校生活を送っているのか。帰国生係の取り組みを通して紹介をします。

一人一人の進路の保障をめざして ~分校生の姿と職場実習の取り組みから~

奈良県立五條高校賀名生分校 桝井 婦美子さん 西川 耕一さん

本校は昼間定時制の分校で、全校生約70名の小規模校ですが、不登校、低学力、「発達障害」のある生徒などさまざまな生徒が在籍しています。分校の中で成長していく生徒達の姿と進路の保障をめざした取り組みの一つ、「職場実習」について報告したいと思います。

第4分科会 人権確立をめざす地域の教育力

「フォーラムに入っていっぱい得したよ」

大和郡山市立片桐中学校人権教育部 杉村 千佳子さん

「先生今度の人権フォーラム何すんの?」「もっといろんな出会いがしたい」市教委が行う人権フォーラムに参加する生徒たち。この活動を通じてエンパワメントしてきた生徒たちの姿と地域との連携について報告します。

合併にともなう人推協の組織づくりと地区別懇談会

葛城市人権教育推進協議会 布施 正保さん

町の合併を克服して、葛城市人推協の活動がどのようにして始まったかについて、三者(教育・啓発・運動)の連携を中心に報告する。また、人推協運動の中心的取組の地区別懇談会について、企画・運営・指導の面から報告する。

第5分科会 子ども会活動

奈良県在日外国人生徒交流会150回の歩み

奈良県外国人教育研究会 谷 敏光さん

1980年に有志の教員が始めた在日外国人生徒のための交流会は、奈良県外国人教育研究会に引き継がれ、昨年150回目を迎えた。本報告はその歩みを語り、同じような取り組みが全国に広がることを訴える。

第6分科会 識字運動

記憶を耕して歴史や生活を明らかにするために ~夜間中学生の歩いてきた道を通して~

天理市立北中学校・夜間学級 福島 俊弘さん

夜間中学生である、ある在日朝鮮人一世の記憶を中心にして歩いた人生をたどります。現地を歩く。道具類を集める。作物を育てる。これらの方法を使って記憶のふたを開けるとりくみのようすを報告します。

もう一花咲かせよう ~楽しく出会い、気軽に学ぶ~

生駒市小平尾さくら識字学級 大北 郁子さん 西田 照美さん

消えかかる識字の灯に「このままではあかん」とムラの女性が立ちあがり、もう一花さかせようと10年前「さくら識字学級」が再スタートしました。楽しい識字学級の様子とそこで初めてムラと出会い、識字と出会い、人と出会ってきた思いと願いを報告します。

第7分科会 生活課題と学習活動

里山は人と自然が共存する

桜井市人権教育推進協議会 NPO法人山野草の里づくりの会 福岡 定晃さん

私達の生命の維持に必要な空気・水・食糧などは健全な地球の働きの中で育まれている。今、日本の里山はどうなっているのか。里山の復旧活動を通して環境保全の必要性を訴える。

第8分科会 生活課題と啓発活動

認めあい 支えあう 人権のまちづくりをめざして ~住民一人ひとりによる「人権のまちづくり運動」の展開を~

大淀町人権のまちづくり運動推進協議会 池田 洋行さん

「大淀町人推協」は、部落差別をはじめ、あらゆる差別の撤廃をめざして取り組んできました。これまでの活動の成果や課題や、住民個人の集まりを大切にした地域に根ざした「人権のまちづくり運動」の取組について報告します。

人権のまちづくり 地域づくりをめざして~インターネット社会の影を斬るとりくみ~

奈良県市町村人権・同和問題「啓発連協」 森田 庄一さん 中野 博章さん

同和対策にかかわる「法律」が失効したと同時に、差別を許さない学習や行動が弱まりつつある現状こそが、差別書き込み事象に拍車をかけている。今一度、被差別の側に依拠したものの見方・考え方を徹底する必要がある。

第9分科会 人権確立をめざす文化活動

トントントコトコ ヨカッタナ ~和太鼓で響き合う障がい児たち~

アゴラ太鼓 水野 恵理子さん

ピアノやマリンバの音楽教室に和太鼓チームが誕生したのは、ダウン症のY君のお母さんの一言がきっかけでした。初めは古タイヤをたたいて、練習していたチームも多くの方々のご支援を受けながら立派に成長し、結成 13年を迎えました。

特別分科会 人権確立をめざす文化活動
11月29日(会場:奈良市中央体育館)

第1講(13:10 ~ 16:00) シンポジウム ◇テーマ「水平社宣言から学ぶもの~世界人権宣言60周年と結んで~ 」(仮題) <パネリスト> ○守安 敏司さん ( 水平社博物館) ○朝治 武さん  ( リバティおおさか) ○花井 十伍じゅうごさん(大阪HIV 薬害訴訟原告団 団長) ○森下 光泰みつひろさん(NHK 番組制作ディレクター) <コーディネーター> ○桒原くわはら 成壽なりひささん(全同教副委員長) <ゲスト> ○佐藤 千恵美さん(桜井市立大福小学校) ○浦 一志さん(御所市人推協) 11月30日(会場:奈良県文化会館)  第2講(10:10 ~ 11:30) 内田 美智子さん  助産師 「命をいただいて、つないで、育む」~輝くいのちが輝き続けるために~(仮題) 第3講(12:30 ~ 13:50) 園田 智也さん  (社)「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」アフガニスタン駐在委員 「アフガニスタンの子どもたち」(仮題) 第4講(14:10 ~ 15:30) 黒田 恵裕さん 奈良県立磯城野高等学校教員 (インターネット掲示板差別書き込みについて考えるプロジェクト会議) 「これでいいのか?! ケータイ・ネットと子どもたちの人権」