第64回奈良人権教育研究大会 報告等の概要事業報告

第1分科会 教育内容の創造と学習活動

「助けられる」側から「助ける」側へ~防災教育の取組を通して~

奈良市立神功小学校 木戸啓太・島野隆(現六条小)

本校では、「自分がすき 友だちがすき このまちがすきな神功の子」の育成を目指しています。その中で、平城西中学校区として防災学習に取り組み始めて4年目です。助けられる側から助ける側へと意識が広がり始めた取り組みを報告します。

生徒とともに創る人権教育の展開~「水平学級」を中心として~

大和高田市立高田西中学校 寺川 聡・巽 正喜

本校の人権教育における大きな柱の一つ、「水平学級」に参加している、母親が海外にルーツをもつA。彼女にとって水平学級は、自分を表現できる場所になっていった。2年になり、Aから「母親が日本語を学んでいた日本語講座を見に行きたい」という提案が。市内にある日本語講座への見学、そして交流が始まった。

自分自身の生き方を考える~道徳からのアプローチ~

田原本町立北小学校 旧5年学年集団

人権教育の中での道徳教育の役割は決して小さいものではないと考える。自分自身の生き方として人権を尊重する心情、態度を育てていくことを目的とした学習を重ねてきた。全校人権集会で取り組んだ「泣いた赤おに」の実践を中心に、教科化を目前に控えた道徳を人権教育にいかに関連付けていけるかについて報告する。。

第2分科会 進路学力保障

『きれいな放物線を描いて』

天理市内中学校

小学校からの申し送りで、生徒指導で手がかかり、周りとのトラブルが多いと言われて入学してきたA。1年生のとき不登校傾向だったAが、2年生となり、学校へ来ることが増え、周りの生徒や教師との関わりを持つことが多くなりました。2年生の3学期、ふとしたきっかけで入ることになった陸上部。一生懸命練習に取り組み、A自身、周りの生徒、教師が少しずつ変化して行く様子を報告します。

「私も勉強頑張りたいねん。」~『楽習部』に集う生徒たち~

香芝市立香芝東中学校 吉田 香

「勉強は苦手。でも私もわかりたい。」勉強したい人がいつでも自由に来る場『楽習部』に今日も集う生徒達がいる。彼らに寄り添い,「わからないことは恥ずかしいことではなく,なかまとともに学べる楽しさを感じることが学びを支える力となることに気づいた。」職員全体で取組はじめた学力保障の取組もあわせて報告する。

第3分科会 自立と共生をめざす集団づくり

第1分散会

今日はどんなお話聴かせてくれる?~絵日記活動から~

奈良市立都祁こども園 山本梨恵

こども園になって3年目の都祁こども園。子どもの絵は発達と大きく関わり、どの子もみんな同じ発達の道筋を通って発達していきます。一人一人の子どもの発達や内面の育ちをしっかりと把握する為に、“描く活動”を取り入れました。その子なりのありのままの表現を受け止め、子どもの絵は見るものでなく、「聴く」ものと全職員が捉え、絵に込められた思いに共感することを大切にしています。初年度から園全体(0歳児クラス~5歳児クラス)で取り組んできている“描く活動”を通じて、豊かな心と表現力を育み、意欲的に活動する子どもの姿を目指した取り組みについて報告します。

せんせ!!あしたも あそぼうね~ダメと言わない保育をめざして~

葛城市 華表保育園

豊かな人間性の基礎が培われる乳幼児期に、1日の生活の大半を過ごす保育園では、子どもが「大切にされている」と実感し、豊かな人間関係が築けるように保育士は丁寧に子どもと関わっている。その生活の様子を報告します。

つぶやきをつなぐ~なかま意識を育てるために~

香芝市立志都美小学校 旧5年学年集団

「ひとこと日記」には、子どもたちの思いがつぶやかれている。また、自分や友達を見つめる時間と場所になっている。担任とのやりとりだけで終わらせるのではなく、子どもの思いを受けとめ、その思いをクラスに投げかけ、広げることによって、子どもたちをつなぎたい。一人ひとりの豊かな個性をつなぐことで、集団として成長させたい。

第2分散会

思いやりあふれる集団づくり

大和郡山市立昭和小学校 旧6年学年集団

私たちは、学年の子どもたちの様子から、友だちも自分も大事にできる子ども、自分に自信をもち進んで行動できる子どもに育ってほしいと考えた。自分は認められ大切にされている、自分にはこんなことができると、教室でお互いに思いやりながら、のびのびと過ごせる集団をめざして進めた取り組み、その後の子どもたちの変容を紹介します。

本音でぶつかり・・・・わかりあう

桜井市内小学校

友だちとなかなかうまくコミュニケーションがとれない。どう関わればよいのか分からず、いやがることを言っては友だちをきずつける。よりよい人間関係を築くために、本音で話し合いながら、誰もが安心して居心地のよい学級を目指した取組を報告します。

自己有用感の醸成を大切にした学年集団づくり

奈良市立平城東中学校 旧3年教師集団

三年三学期に取り組んだ「私の答辞集づくり」。沖縄修学旅行,文化発表会,体育大会,部活動,生徒会活動,進路選択など、自分の三年間を振り返り、体験を通して学んだ成果を原稿用紙五枚に綴った。学級発表,学年発表,卒業式へと続くその取り組みの中で、各々の体験が自己有用感を高め、仲間を認め合い、自分たちの存在を肯定するかけがえのないものになっていたことを実感する。入学当初からの学年集団づくりの内容や、本校で取り組んでいる行事のようすをお伝えしようと思う。

第3分散会

いらんて

生駒郡内中学校

2年前Aの兄を担任した。私はAを小学校から知っており、Aも私のことを知ってくれていた。兄にあこがれを持つAは入学式当日異装で登校。なかなか自分の気持ちを伝えることができず、すぐに手が出てしまうA。Aと出会い、Aと関わる中で、私自身気付かされたこと、学んでいることを報告する。

「それでええんか!」~生き方に迫って~

御所市立大正中学校 和田雄弘(現三郷中)

一人の子どもが、家族や周りの人との関わりや、部落問題学習をはじめとする学びによって、自分の生き方について見つめ直し、自立へ向かって歩みだす。子どもに突きつける「それでええんか!」という言葉を、自分自身にも向けながら迫ってきた。入学から3年間の思考と実践の記録。

ひとつになれ!3年3組

奈良市内小学校

31人で出発した3年3組。3年生になって転校してきたAは、生活、学習できびしい課題を背負っていました。当初は遅刻や忘れ物をする毎日でしたが、友だちともつながり、少しずつ宿題もしてくるようになってきました。そんなAもふくめ、それぞれの個性を生かしながら、ひとつになることを目指して取り組んだ人権学習について報告します。

第4分散会

「27+1=笑顔でピース」ピースが28そろって6年3組

桜井市立安倍小学校 吉井美保

一昨年出会った子どもたちと2年間の生活。泣いたり、笑ったり、学んだりと・・・。取り組めば取り組むほどAの存在が遠くなる。けれど、子どもたちも私もAの存在なしに6の3は成立しない、みんなが、かけがえのない1ピースであった。2年間の取組を報告します。

問題を抱える生徒と「関わり」

奈良市内中学校

中学校に入学してから校内外で生活が荒れだし、1年の最初の頃はなんとか授業に参加していたが、行動の面でも問題行動がエスカレートするようになる。2年になると自分の感情を迎えられない状態や対教師暴力もみられるようになり、クラスから孤立していった。3年生になり私のクラスになった。教師の関わりや努力もなかなか通じない状況であった彼女が、クラスの生徒との関わりと共に教師・学校との関係性も少しずつ変化していった様子を追っていく。

新しい出会いを通して

御所市内中学校

小学校から不登校傾向であったA。中学校へ入学してからも人間関係のもつれから再び学校へ来れなくなった。新たに学年が上がり、さまざまな新しい出会いを通して、少しずつ登校できるようになったAの様子を報告する。

第5分散会

「おーい、いっしょにあそぼよ。」

御所市内小学校

自分に自信がもてず、自分からほとんど関わろうとしないAと出会った。複雑な思いを抱えたまま学校にきているAを何とかしたいと思った。しかし、Aの前に立つ私自身に課題があることに気づく。関わりを悩む中で、私自身を問うきっかけを与えてくれたA。その中で少しずつ成長してくれたAの姿を報告したい。

めざせスーパー3年生

橿原市立晩成小学校 旧3年学年集団

やる気に満ちあふれ、元気いっぱいの3年生。「子どもたち同士のコミュニケーションのとり方」「ものごとを見るときの視点の多様化」を2本の柱として取り組みを進めてきた。取り組みを進めていく中での子どもたちの反応や変容を報告します。

合言葉は「こころをあわせる」

天理市内小学校

昨今、「課題のない子はいない」と言われる時代。私が出会った1年生も配慮や支援を必要とする子が多く、「小1プロブレム」を思わせる状況でした。課題の多い子どもたちがつながり合い、その関係性を集団の力とし、「こころをあわせる」を合言葉に居心地のいい空間づくりをめざした。そんな子ども達の姿を報告します。

第6分散会

生きる力になることを願って蒔いた種

宇陀市立榛原東小学校 奥 和弘(現榛原小)

人権教育を進める上での課題(児童や保護者との信頼関係の構築,支え合える集団をつくるための手立て,一人一人に自信をもたせ課題解決の意欲を高めるための手立て,人権教育の視点を大事にした各教科の学習の在り方,学校での取組について保護者の理解を得るための手立て…)を解決しようと取り組んだ小ネタ集です。

輝け、命  ~いらない人なんて、いてないんやで~

広陵町立広陵中学校 旧2年生学年集団

強い遺伝子が勝ち、弱い遺伝子が消えるのではない。常に両者は共存してきた。だからこそ人類はここまで進化した。この事実をもとに「全てこの世にあるものは、何らかの役割を担って生まれてくるのだ。」ということを確かめ、一人ひとりがかけがえのない存在であることに気付いたこの2年間を報告します。

一人ひとりを大切にする取り組みについて

大和郡山市立郡山西中学校 森 紀夫

124名の生徒を迎え、1年生の学年がスタ-トした。31名×4クラスという生徒に対し、教師集団は8名。 そのうち3名が今年度郡山西中学校に転勤してきた教師という学年構成である。一人ひとりを、そして一人ひとりの思いを大切にし、子どもたち同士がお互いを認め合いながら、成長していける集団を目標に取り組んできた学年全体や各クラスの取り組みを報告する。

第7分散会

「せんせいのせいや」~子どもと“向き合う”ということ~

天理市内小学校

初めて1年生を担任する中で、さまざまな子どもたちと出会い悪戦苦闘の日々を過ごしている。Aは優しい心を持っていてよく気が付くが、何か嫌なことがあると叫んだり物に当たったりしてしまう。Aが怒るのには、必ず理由があるのだが、うまく聞き出せない。悩みながらAと向き合い、学んだことを報告したい。

みんなちがってみんないい さまざまな個性を認め合って

平群町立平群南小学校 旧1年生教師集団

昨年度、小規模校の平群南小学校に34名の新1年生が入学してきました。さまざまな個性を持つ子どもたちがお互い理解し合い、認め合える関係づくりを目標に学年で取り組んできたことを報告します。

「友だちを大切にする日」~命を大切に 自分を大切に 友だちを大切に~

奈良市立伏見小学校 笠井奈津美・ 吉村安里砂・ 仲西亮悟

本校では、毎月11日を「友だちを大切にする日」と定め、テーマに沿って各学年や学校全体で取組を進めています。また、昨年度は児童の人権意識を可視化し、その変容を把握することを目指して新たな取組も始めました。職員一丸となってこれらの取組をどのように進めてきたか、これまでの具体的な活動を交えながら報告します。

 第4分科会 学校・園・所づくり    

「人権・同和教育」を推し進めるための本校の研修体制について~河合一中教育の継承と創造~

河合町立河合第一中学校 教職員集団

本校においても若い教職員が増えました。これまで先輩方が培ってこられた河合一中の教育文化である「人権・同和教育」の視点を受け継いでいきたい。ずっと「あたたかい目」で子どもたちを見つめていられる学校でありたい。若い教職員の目から見た、本校の「人権・同和教育」の継承と創造に向けた取り組みを紹介します。

枝を広げたあったかの木 ~主体性を育み、互いの良さを認め合う取組を通して~

五條市立阿太小学校 山 章子・ 中西大亮

アンケート結果から自尊感情が低い児童が多いという実態が明らかになった本校では、児童の主体生を育むことで自尊感情を高めようと、カリキュラム・マネジメントを取り入れた運動会の改善に取り組んだ。また、それと並行しながら、互いの良さを認め合う「あったかの木」の活動にも全校体制で取り組んだことについて報告する。

ほんまにこれでええの~確かな人権学習の継承と創造~

奈良市立東市小学校 森 信勝

東市小学校では、人権・部落問題学習の再構築に取り組んでいます。
毎年のように続く高学年での学級のよろめき、子ども・保護者・地域そして私たち教員自身の部落問題への意識の変化、中学年での総合的な学習の時間の減少に伴う学習内容の整理など、考えていくべき課題が数々あります。まだまだ、試行錯誤の段階ですが、東市小学校の取り組みを紹介します。

 第5分科会 保幼こ・小・中・高・地域の連携と教育力

人との出会いを通して~共に育ち合うなかまづくりをめざして~

五條市立西吉野幼稚園 大西尚子

少子化が進み、子どもたちは家庭に帰ると近くに遊ぶ友達がいないこともあり、思っていることを言葉でうまく相手に伝えられない、すぐに諦めてしまうなどの様子が見受けられる。子どもたちを取り巻く地域の様々な人との出会いを通して、共に育ち合うなかまづくりをめざした日々の取り組みについて報告させていただきます。

アンテナは高く、目線は低く~学校は、家庭・地域とどのようにつながりをはかったのか~

葛城市立新庄小学校 旧5年学年集団

子どもを真ん中において、立場の異なる学校と家庭とどのようにつながりをはかってきたのかを報告します。野外活動や組立体操をどのように学級通信で伝えたのか、学級で気になる子にはどのようにアプローチをしたのか、地域パートナーシップのみなさんにも支えられていることも紹介します。

「見守り隊」の結成と進化~「課題研究」から生まれた愛(めぐ)し児(こ)たち~

奈良県立西の京高等学校 堤 乃扶子

「課題研究」の授業の中で、地域の高齢者問題をテーマにしていた生徒たちが、見守り隊(現 ひまわり隊)をたちあげ、高齢者との交流活動を実現させるまでの取組と、それを引き継ぎ発展させた下級生の活動について報告します。

第6分科会 特別分科会

「叡尊と忍性」

帝塚山大学 西山 厚さん

鎌倉時代に、この奈良で、「興法利生(正しい仏教をさかんにして、みんなを幸せにする)」をめざし、90年の生涯を送った叡尊は、社会福祉の先人として広く知られている。また叡尊の弟子の忍性は、やがて活動拠点を奈良から鎌倉へ移し、大活躍する。今年は忍性が生まれてからちょうど800年という記念の年にあたっており、この機会に、ふたりの生涯とその熱い思いに、あらためて触れていきたい。

「若者が語る部落問題の今」

コアプラス 武田 緑さん

同年代と部落問題について話すと、「まだ差別なんてあるの?」という反応が多く帰ってきます。しかし、ネットの出現もあいまって、新たなかたちで差別は温存されています。部落問題を取り巻く環境は一昔前と大きく変わり、差別のあり様も様変わりしています。今回は、「イマドキの部落問題」について、またこれからどうしていけばよいのかについて、みなさんと一緒に考えられたらと思います。

色覚に対する正しい知識と色覚特性への理解について

本郷眼科・神経内科院長 高柳泰世さん

検査項目に従って、検査をしてその結果を伝えるだけでは「しない方が良かった」と言われる場合がある。その典型的なものに「色覚検査」がある。色覚検査希望者は先天異常の有無を調べてほしいのではなく、学校生活で色彩で困っていることはないかを知りたいので、それは石原表ではわかりません。CMT(色のなかまテスト)で混乱する色の組み合わせを知ることが出来ます。

全体会 オープニング

奈良市人教

歌「ふるさと」

奈良市立春日中学校夜間学級 生徒のみなさん

今まで生きてきた時代や場所も違う、春日中学校夜間学級の生徒たちがそれぞれのふるさとを思いつつ、歌います。

全体会 特別報告

奈良市人教

「ひとつの学校として Kasuga As One」~昼と夜の交流を通じて~

奈良市立春日中学校 千葉由華さん・ 北村弘子さん

春日中学校は、夜間学級を併設している学校です。校舎も同じ敷地内にあり、「夜間学級」については、1年生で学び、文化祭では舞台発表等で交流することもあります。しかし、本当にお互いのことを理解するまでには至っていません。同じ春日中学校生として、1つの学校としてもっとお互いが身近に感じられる、お互いが学び合えることを目指してすすめている取り組みを報告します。

全体会 記念講演

実態調査からみる被差別部落の現在 ―自己責任時代における部落問題―

龍谷大学 妻木進吾さん

「部落差別の解消の推進に関する法律」を含め、現在に至る部落問題の歴史の概要を振り返った上で、「格差社会」化が社会問題化して以降の被差別部落(焦点を当てるのは都市部落)の実態―再不安定化が懸念される実態―をいくつかの調査データに基づきながら紹介する。しかし、こうした不平等と困難な生活実態は、しばしば自業自得/自己責任として回収されがちである。不平等を正当化するこうした観念についても考えていきたい。