事業報告

第70回奈良人権教育研究大会 報告等の概要

第1分科会 教育内容の創造と学習活動

第1分散会

一人一人の子どもの心をみつめて ~もの・ひと・ことと関わる中で~

奈良市内こども園

遊びや生活の中で一人一人の子どもの心を育むことを大切にしています。様々な環境を通して、“もの・ひと・こと”と関わり、子ども一人一人が心を動かす体験を積み重ねる中で、自分らしさを出して活動する喜びや、思いやりの気持ちなどをもてるように取り組んできたことを報告いたします。

「俺は別に独りでええねん。」

桜井市内小学校

「俺は別に独りでええねん。」涙を流しながらそう叫んだAの目は、むしろ、(先生、なんとかしてくれ…。)と渇望しているように見えた。『一人も独りをつくらない学級』をめざして、一言日記、学級通信、家庭訪問、そして“しばてん”の学習に取り組んだ。そこから見えてきたことを報告する。

「当たり前」「思い込み」に気付く力を

宇陀市内小学校

学習への前向きな気持ちや、友達への思いやりはもっているものの、周りの人の気持ちを考えずに行動したり、「この子はこうだから」と思い込んで厳しい言葉をかけてしまったりする子どもたち。地域の人々の歴史・仕事と「島ひきおに」の授業を通して、クラスの子どもたちがどう変化したかについて報告する。

第2分散会

なかまづくりをめざして ~学年の取り組みとして~

生駒市内中学校

学年のなかまづくりをすすめるために、どんな取り組みをしていくのがいいのか、と悩んでいます。そんな中で、「なかまとともに」の教材や「グループワーク」の教材を使おうと思い、学年へ取り組みとして、行いました。生徒たちの様子に合わせて行ったなかまづくりをめざした日常の取り組みを発表します。

○○(小学校)大すき ともだち大すき 自分大すき

大和高田市内小学校 2年生学年集団

自分のことを知るには、自分以外のことを知っていく、考えていくことが必要である。他と比べたり、知ったり考えたりと、対話していく中で、自分のこと、○○(小学校)のこと、友だちのことをわかり、すきになっていってほしい。そのような願いを込めた実践の記録について報告する。

「部落問題から未来を学ぶ」~歴史から将来へ~

香芝市内中学校 

部落問題は我が国固有の問題である。本校では2年生時にそれが生まれた歴史的な経緯や差別撤廃に向けた運動や施策について学習する。この学習活動により、部落問題が自分たちの身近な問題であり、自分の生き方にどうつなげていくかを考えた。こうした取り組みを通して、生徒たちの考えの変容について報告する。

第3分散会

人と地域を愛する心~未来に向けて、心に種をまく~

橿原市内小学校 旧4学年集団

人間関係が固定しつつあり、目の前の困っている友だちに手を差し伸べられない場面が見られる4年生。そこで、人間同士や地域との『つながり』を大切にできる児童の姿を目指してきた。「島ひきおに」の取組での児童の反応や、地域の開鑿や移転に携わった人を取り上げた学習などを報告します。

「先生、明日泣かしたるからな。」―― 不信感ではなく安心感、そして自尊感情へ ――

宇陀市内小学校 

前年度、いろいろなことがあった6年生。不安を取り除くことからはじめ、「持ち味見つけ」、生活綴り方、部落問題学習等に取り組んでいきました。途中、しんどくなったAによりそいながら、6年教室をみんなが安心して過ごせる場、高め合える場へと変えていくことができました。つながり合った子どもたちのことを報告します。

主体的に学ぶ部落問題学習 ~ジグソー法を用いた試み~

北葛城郡内中学校 

本校2年生は、1学期にゲストティチャーをお招きして部落問題学習の講演を行いました。夏休みには有志の生徒たちで現地学習会に参加し、フィールドワークを行い、リニューアルされた水平社博物館を見学しました。2学期には生活班でパートに分かれて部落問題学習の歴史や背景について調べ学習を行い、ジグソー形式で発表し合いました。それらの取組の具体的な内容と成果を報告します。

第2分科会 進路・学力保障

第1分散会

学びあい、つながりあう学校を目指して〜対話を通した聞きあえる関係性と受援力を育成できる授業づくり〜

奈良市内中学校

本校は「学びあい、つながりあう学校を目指して」〜対話を通した聞きあえる関係性と受援力を育成できる授業づくり〜という研究主題のもと、授業改善に取り組んでいます。全校での授業研究への取り組みと、1年生(現2年生)数学科における「学びあい・教えあい」の授業実践を報告します。

いいとこ みっけ! ~自分もなかまも大切にする集団を目指して~

大和郡山市内小学校 

協力することが嫌で自分本位な行動をとったり、相手の気持ちを考えずに振る舞ったりすることが小さなトラブルに繋がっていた1年生の児童。そこで、学校として取り組んでいる「いいとこみっけ」を行い、自分や友だちには必ずいいところがあるという視点をもたせ、なかまとの繋がりをより一層築いていくことを目指す。

今、あの子に何が必要か~がんばる土台をつくる~

五條市内小学校

小学校が統合となり、少人数の学級から環境が変化しました。順調に学校・学級作りが進んでいるかに見えましたが、その中で様子が落ち着かず、自分の気持ちをもてあますAとB。周りからみると「がんばっていない」と受け取られるような行動をしたりする彼らの「がんばる土台」作りとして行った取組を報告します。

第2分散会

不登校生徒の学力保障と進路保障

大和郡山市内中学校

朝から登校することが難しいA。朝から授業を受けられないAに対して、夕方に1時間ずつ授業を行ったり、放課後に定期テストを受験させたりする取組も行っている。すべての生徒に学習機会を保障するために、学校ができることを摸索してみた。

家族以外と会話する機会を頂きありがとうございます

大和高田市内中学校

年々増加傾向にある不登校問題。2021年度に、自分自身が担当した学級に在籍した不登校生Aに寄り添ったことについて報告する。取組と言えるかどうかはわからないが、AやAの家族との関わり、自身の気づきや苦悩なども報告の中で聞いてもらいながら、参加者のみなさんとともに喫緊の教育課題として考え会う場にしたい。

自己実現への導き~定時制課程の進路指導を通して

県立高校定時制

本校定時制課程の生徒の大半は、不登校を経験している。今回の報告は、学校に行きづらかった原因や事象を乗り越えて、3年卒業を目指し、夢を持ち、自己実現を果たす生徒の軌跡である。

第3分科会 自立と共生をめざす集団づくり

第1分散会

「真」のつながりをめざして

御所市内小学校

4年生9人。「ギャングエイジ」の真っ只中にいる子どもたち。心身の変化に伴い、人間関係にも変化が見られる。「自己主張が強く、影響力のあるA」、「自分の気持ちをうまく言葉で相手に伝えることができないB」。学年当初、距離を感じていた二人の「つながり」から「『真』のつながり」への構築を目指した取組を報告する。

友達と一緒に!

生駒郡内幼稚園

クラスの中には特別な支援を必要とするA児がいた。クラスの幼児と過ごすのは3年目になるが、A児が行う事を「Aだからしかたない」という表情で見つめる子どもたち。今のA児と他児の関係性からお互いの良さを認め合い、心を通わせて支え合えるようになってほしいと取り組んだことを報告する。

「こんなクラス、もういやや!」〜あたたかいつながり合いを目指して

北葛城郡内小学校

4月中旬、「ふきのとう」の追い読みをしていたとき。ある男児がわざと速く声を出す。私が読み直しを指示すると、支援学級に在籍する男児が同じことを繰り返す。題名は、指導が通らず、ざわつきがおさまらない中、女児Aが発した言葉である。本報告は、Aがクラスの児童とあたたかい関係をつくり上げていく成長記録である。

第2分散会

居心地のよい教室をめざして~温かい言葉で安心できるなかまづくり~

天理市内小学校

「旅に出たいんだよ。」と教室を後にするA。Aを中心に、居心地のよい教室をめざして、教員がモデルとなり、子どもたちも肯定的な受け止め方や温かい言葉を大事にしてきた。Aとみんなが過ごしやすい環境づくり、子どもたちを繋ぐしかけづくりで安心感がうまれてきた。子どもたちの変容を報告したい。

違いを認め合う学年・社会をめざして

桜井市内中学校 旧1学年集団

本校の1年生では「違いを認め合い、尊重し合える学年」をめざしています。1年生での障がい者理解や地域学習、多様性をテーマとした劇等の取り組みについて報告します。

29人で4-1~全員の居場所をみんなでつくる~

北葛城郡内小学校

特別支援学級入級のAを含め、29人でスタートした4年1組。行事や活動を通しても、「Aのことは、先生に任せておけばいいか」とAの存在を遠く感じている雰囲気があった。学級全体にAへの理解が足りていなかった。Aを中心に29人全員の居場所をみんなでつくることを目指した取り組みと子どもたちの変容を報告したい。

第3分散会

もう行けないんです。

天理市内中学校

初めての学級担任、ドキドキしながら入学式を迎えた。元気に学校に来ていたAからある日「もういけないんです。」と電話がかかってきた。段々と学校にも来なくなってきた。母とも毎日連絡を取り合い、中々大人の思いが伝わらず、それでもまたあのAの元気な顔が見たいと思い向き合い続けた1年間について報告する。

Together

御所市内小学校

2年半ぶりに担任することになった子どもたち。自己決定できず、失敗をおそれる集団の実態があった。常に子どもに委ね任せること、失敗を受け入れることにこだわって実践をしてきた。安心して認め合える集団になってほしいという思いを「Together」という学級目標に乗せ、取り組んだ日々について報告したい。

学級集団形成理論に基づいた学級経営~日常と行事のつながりを意識して~

磯城郡内中学校

学級集団形成理論に基づいて行った学級経営の報告を行う。学級集団は、4月の混沌緊張期から自治的集団という形成過程を歩むとされている。これは自然になるのではなく、1年間を見通した学級経営をするからこそなっていける。昨年度の学級経営を事例に、学級通信を紹介しながら、学級集団形成の一事例を報告する。

第4分散会

「一人ひとりのもちあじが輝くクラス」をめざして

橿原市内小学校 

5年生の教室には、笑顔が溢れ、安心して学ぶことができる環境があった。しかし、特定の子を軽視したり、あの子は○○だと決めつけたりする「差別や偏見」もあった。そこで、改めて、一人ひとりが友だちの「もちあじ」と向き合い、「一人ひとりのもちあじが輝くクラス」をめざして取り組んだ実践を報告する。

つながりを大切にし、お互いを認め合える集団へ

御所市内中学校

本学年は、11名の少人数学級である。全員が同じ小学校を卒業し、クラス替えもない単学級のため、互いが幼馴染みの関係である。中学校入学から現在までの中で、生徒たちのもつ個人的課題が少しずつ表れ始め、生徒を取り巻く学級の雰囲気や環境の変化にも、集団的課題が見えてきた。個人、集団双方の課題に対して、学級経営や生徒指導の中で働きかけを行い、生徒同士が今以上に深い絆でつながり、一人ひとりが互いを認め合って成長することを目指した。以降、生徒の変化と今後の展望について報告する。

「ちがい」を受け入れるためには~小学2年生の人権学習~

生駒郡内小学校 2学年集団

コロナ禍の影響で「多様な相手を知る・関わる」という経験が少ない学年を担当した。自分とは異なる考えや感覚、行動が見られる相手との関わりに戸惑う子どもたちに対して、「ちがい」について知り、向き合う学習を設定した。学年担当とも何度も話し合い、5つの実践を重ねた。すると子どもたちの関係性に変化が・・・。

第5分散会

つながり

大和高田市内中学校

Aとの会話は難しい。Aは言葉を発するのに時間がかかる。「同世代の子どもたちとのコミュニケーションはまず無理です。」と母親から言われた。Aは1人でいることを苦に感じる様子はなく、地図帳に夢中である。Aと周りの子どもたちをつなぐために何ができるのか。悪戦苦闘しながら行ってきた取り組みの一部を紹介する。

「外国にルーツをもつ児童を中心に据えた学級づくり」~みんなの居心地のいいクラス~

葛城市内小学校

本校に在籍するペルー出身のAと、取組を通して見られたAや学級の変容をまとめたものを報告する。6年生の進級時に転校してきたA。環境の変化があり、なかなか心を開けないA、今まで築いてきた関係性から新たにつながりをもつことへ抵抗を感じている学級の児童と、学級のあり方を模索する担任の思いを報告する。

「先生、わかりません」~子どもが安心して自分の力を発揮できることを目指して~

宇陀市内小学校

教師になって、9年目にして初めて経験する特別支援学級担任。当初は、本当に上手くいかなかった。悩んでいる中、子どもたちから教えてもらった改善のキーワードは「安心」だった。子どもたちがのびのびと自分の力を発揮できることをめざし、悪戦苦闘しながら行った実践について報告する。

 第4分科会 学校・園・所づくり    

今年度、分科会報告はありません。

 第5分科会 保幼こ・小・中・高・地域の連携と教育力

 

「これ、○○さんのぶどうだよ~えん・くろすの取組を通じて~」

生駒市内幼稚園

園と地域がともに活性化することを目指す地域園協働本部「えん・くろす」。地域の方と子ども達のふれあい、メンバーのやりがいや輪の広がり…。人とのつながりを取り戻し、園から元気と笑顔を発信しようと、園、保護者、地域の方が一体となって園と地域を盛り立てる取組の中で生まれた思いやあたたかさについて報告します。

明日も一緒に遊ぼうね~子どもたちの思いをくみ取った保育を目指して~「

高市郡内幼稚園

初めての集団生活を過ごす3歳児が、保育者や異年齢の友達に温かく見守られて安心感をもち、周りの人を信頼する気持ちが育まれるように又、園生活を楽しく過ごせるようにと願い、クラスの子ども一人一人に寄り添った保育者の関わりや環境構成等に取り組んできた実践について報告します。

『子どもたちの豊かな育ちをつなぐ』~こ幼保・小・中・地域の連携~

奈良県人権保育研究会

保育・教育の連携『0歳から15歳(18歳)までをつなぐ』とは,どういうことなのでしょうか。皆さんと共に考えたいと思います。

第6分科会 特別分科会

子どもの権利条約と人権保育

全国人権保育連絡会 堀井 二実さん

1994年に日本が子どもの権利条約に批准して30年近く。国内法として発効されたにも関わらず現場で広く浸透していません。そんな中、今年4月に「こども基本法」が施行され、子どもの権利条約の4つの原則等を、現場でどう具現化していくかが求められています。子どもたちを、保護される存在ではなく、一人の人として尊重する保育実践を積み上げられてきた堀井さんの実践から、私たちがもっている子ども観を問い直したいと思います。

地域で学ぶことは、地域で生きること ~人生を一本の幹に~

インクルネット西宮 鍛冶 克哉さん

生後7か月で脳性まひと診断され「豊中市立しいのみ学園」に入園、豊中市立東豊中小学校から同市立第十五中学校へと地域の学校へと進学した鍛治さん。高校進学と同時に電動車椅子に乗り、卒業後は西宮で自立生活を始められます。 障害者の自立生活運動を行う中で抱く「障害者に対する差別や偏見、間違った先入観は、小さい頃から分けられている環境が生み出しているのではないか?教育の仕組みにアプローチしなければ、世の中の障害者差別がなくならないんじゃないか?」との思いを軸に講演いただきます。

「自分らしく生きる」とは? ~性の多様性から考える自分らしさ~

合同会社虹縁(こより)代表 田崎 智咲斗さん

奈良県内の小中学校、高等学校を中心に全国の高等学校や大学、自治体や人権にかかわる研修会等において年間約50回の対話型講演会を実施。LGBTQという性的マイノリティとしての切り口はもちろん、教育、福祉、家族や地域コミュニティといった視点も交えた内容を踏まえ、人として性的マイノリティ当事者として、「自分らしさ」をテーマに対話型講演をしていただく。

全体会 オープニング

和太鼓演奏    

三郷中学校「響」のみなさん

どんどん和太鼓「響」は、三郷町と学校が連携している「子ども人権学習支援事業」の一つです。毎年、三郷中学校の生徒から打ち手を募集し、活動を行っています。おもな発表の場は、学校の文化祭と地域の町民文化祭です。「響」の歴史は長く、過去には太鼓がどうやってできるのかについて現地で学習した先輩たちもいます。今年度の活動においても、最初は自信のなかった子どもたちも、練習を重ねる中で、なかまとの絆を深め、太鼓の音にも力強さがでてきたところです。これまでの練習の成果をみなさんの前で力いっぱい発揮したいと思います。

全体会 特別報告

生駒郡現地実行委員会

「大事にされた」と子どもたちが感じられる取組をめざして~さまざまな背景をもつ子どもたちに寄り添うために~

三郷町立三郷小学校 内山俊之さん  児童養護施設武田塾 山口加奈子さん

これまで、子どもたちととことん関わり、家庭訪問を繰り返して保護者ともつながり、子どもたちのくらしの事実を知ろうとしてきた。さまざまな背景をもつ子どもたちにとって、学校が安心できる場になるために何が必要なのか。どうすれば、子どもたち一人一人が「大事にされた」「愛された」と実感できるのか。校区にある小規模児童養護施設と学校が、情報を共有して連携しながら取り組んだ実践を中心に報告する。 

全体会 記念講演

「差別・偏見問題に社会心理学はいかに取り組んできたか ~悲観論から楽観論~」

甲南大学文学部 特任教授 池上 知子さん

なぜ、人は人を差別するのでしょうか? この問題に社会心理学は長年にわたり取り組んできました。ただ、研究が進むにつれ、差別の背景には人間の本質にかかわる心性が関与していることが明らかになり、問題の解決が容易でないことがわかってきました。しかし、最近、人間本来の心性に寄り添うアプローチを取る研究が登場し、楽観的な見通しを与えてくれています。本講演では、こうした社会心理学の歩みと新たな展開についてお話しします。