人権エッセイ集

2020年度 あいどるとおく

6月号「コロナと人権」

ニュースや新聞では毎日、新型コロナウイルスの感染者数や拡大状況などが報道されています。それを受けて、各学校・園・所では、新型コロナウイルスの感染拡大防止や子どもたちの学びの保障などに、尽力されているでしょう。世の中が揺れ動いても、子どもの願いや生活背景を知ろうとすることや、進路・学力保障をどのように進めていくのか、各家庭の環境を配慮した取組にできているのかなど、一人ひとりの子どものことを考える日々には変わりがありません。

ある学校での話です。今年の4月、一見体調が悪そうな同僚に一言「帰り!」という発言がありました。その背景に、どんな思いがあったのでしょうか。その同僚を心配する思いや自分の身を守りたいという思い、自分から遠ざけたい思い・・・。「帰り!」という言葉が排除だと感じた人がいなかったのか心配になりました。その言葉に付け加えて、「代わりにその仕事やっとくから・・・」などという、ほっこり言葉があれば、よかったのにと思いました。

かつて、感染力が強いという認識が広まる中で、ハンセン病患者を隔離する政策が続けられ、全国各地に療養所が開設されました。1953年には「らい予防法」が新たに制定されましたが、患者に対する差別や偏見をさらに助長してしまいます。そして、ハンセン病は治る病気とされてからも排除や差別が残り続けました。1996年になり、ようやく「らい予防法」は廃止されましたが、今もなお、ハンセン病の問題は解決していません。また、2001年には、元患者が国を相手に行ってきた裁判で勝訴し、国は隔離政策の誤りを認め、賠償金の支払いを命ずる判決が出されましたが、失った時間や家族は取り戻せるものではありません。

いつの時代も、病気にかかった人が排除されない、差別されないということが大切であることを忘れてはなりません。もちろん、感染の可能性が低いといえる環境は安心材料の一つです。でも、それだけではなく、なかま(同僚)に「今日、少ししんどいねん」と気兼ねなくいえる環境、なかまがそっと寄り添ってくれる環境こそが大切な安心材料ではないでしょうか。一人ひとりの人権が守られているのかを今一度問いかけていきましょう。 

広報『なかま』325号に掲載しましたあいどるとおく「コロナと人権」に、誤解を生じやすい文章表現がありました。お詫び申しあげ、修正させていただいたものを掲載しています。ご了承くださいますようお願いいたします。

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