かつて担任をした子に、教員に対して強い不信感を持っている子たちがいました。休み時間を“イツメン”と過ごし、授業が始まっても教室に入らないこともありました。その姿を見て、「教員がどこまで自分たちと関わってくれるのか、試しているんだな」と感じました。だから私は、「彼女たちにとって信じられる大人になりたい」と思いました。
そのうちの一人は家庭訪問や二者懇談等、ことあるごとに「修学旅行には行かない」と言っていました。その度に「私はあなたと修学旅行に行きたい」と言ってきました。そして、いよいよ修学旅行が近づいてきた時、最終確認で「修学旅行に行こうよ」と話すと、「面白くなさそうやから行かない」と。母親も「行かないと言っているので、参加させません」という返事でした。(そこまで言うなら、仕方がないかな)と思っていましたが、同僚から「もうできることは全部したの?」と言われました。その言葉にハッとし、もう一度本人に話をすると、「どっちでもいいけど、不安はある」と言いました。その言葉に、(やっぱり行きたくないわけではなかったんだ!)と確信を持ったので、母親にもそのことを話し、改めて説得しましたが、言葉や理由を変え、参加させないようにしているように感じました。それでも「彼女に、みんなと修学旅行に行ったという思い出を作りたいんです!」と言い続け、「そういうことなら」と母親は参加に同意してくれました。そして彼女は、何の不安を訴えることなく友だちと笑顔で修学旅行を終えました。
今、学校では、一人の子どもが見せている荒れと向き合っている最中です。その子は教員が話しかけても「うるさい」「黙れ」と言って、トイレに閉じこもっています。「落ち着ける場所で話そう」と話しかけても、「話して何になるねん」と応じません。学校には「“迷惑”をかけに来てんねん」と言います。しかしそれが、私には「自分でもどうしていいかわからない」という言葉にならない叫びに聴こえています。これからどう関わろうかと考えていると、あの時の同僚から言われた「もうできることは全部したの?」という言葉が何度もよみがえってきます。そうして「まだやれることはある」と奮い立つのです。
生徒指導の提要改訂版には、課題を未然に防ぐために、成長を促す積極的な生徒指導の充実が盛り込まれました。子どもたちが見せる荒れを、生活背景から受け止め、そして願いをかけて関わり続けることが、積極的な生徒指導になるのではないでしょうか。同僚から言われた「もうできることは全部したの?」という言葉を自身の指針にし、子どもたちと向き合っていきたいと思います。