人権エッセイ集

2024年度 あいどるとおく

10月号「横断歩道」

校・園・所の付近においてもよく見かける「飛び出し人形」は車の普及で事故が急増した1973年、子どもたちの交通安全への願いをこめて滋賀県で誕生したそうです。自動車に搭載される安全装置は日々進化し、私たちの運転技術の未熟さをカバーしながら未然に事故を防いでくれています。しかしながら、横断歩道において横断者が犠牲となる事故は後を絶ちません。ご存じの通り、横断歩道は横断者優先であり、ドライバーは横断者を認めた際には一時停止しなければなりません。

私自身も横断歩道の通過だけでなく、歩道を越えて店舗駐車場へ侵入するときも、横断者がいれば一時停止を心がけています。ところが、こちらが停まっているのを心苦しく思ってなのか、急いで前を渡ろうとする横断者をよく見かけるのです。そのたびに「ゆっくりでいいのに。あわてて転んだり、荷物を落としたりすれば大変だ。」と思い申し訳ない気持ちになります。と同時に、遠足などの引率で子どもたちと出かけたとき、赤信号の間には「前につめて!」と急かし、信号が青に変わるやいなや「急ぎなさい!」という言葉がけをついついしている自分がいることにも気づかされます。

そういえば、毎朝の通勤途中で出会う「登校見守りボランティア」の方たちも横断歩道で子どもたちに何か言葉をかけておられるのですが、その表情はいつも笑顔です。ランドセルや通学カバン以外にいろいろな気持ちを背負って登校してくる子どもたちに、きっと優しい言葉をかけてくれているのでしょう。暑い日も寒い日も温かく子どもたちを見守ってくださっている姿には感謝しかありません。

本来、横断歩道は横断者が安全に渡るために設置されたもの。安全を最大考慮したうえで、人にも社会にも「優しい」言葉を「優先」したいものだなと思います。

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