人権エッセイ集

2024年度 あいどるとおく

1月号「研究大会司会者総括会から」

今年度「エミー賞」において18部門を受賞し、年明けにはゴールデングローブ賞も受賞した『SHOGUN将軍』シリーズで、エピソード監督も務めた福永壮志監督によるドキュメンタリー映画『アイヌプリ』が12月より公開されました。本作では伝統的な鮭漁=マレプ漁をはじめとしたアイヌ文化を継承し、“アイヌプリ”(アイヌ様式)を実践する人々の営みが映し出されます。

福永監督のインタビュー記事をネットで読んでいると、ふと「映画監督」の仕事は研究大会の司会者と重なるところがあるなと感じました。作品のテーマをどういうシナリオで、撮影チームと協力してどのような音響や映像にのせて伝えるかを考えることは、報告内容や報告者の想いを出発点に、参加者それぞれの実践とどうつなげて柱に沿った討議をするのかを考える司会者とよく似ているのではないでしょうか。

第71回奈人教研究大会の10日後には、分科会の司会者が一堂に会して総括会を行いました。総括会では分科会での活発な議論を振り返りつつ、世代の壁を越え確かな継承をねらったグループ討議の在り方や、司会経験によらず効果的に進行やまとめをおこなうための方策について意見をいただきました。

最後の司会者交流では「司会者として参加することはとても荷が重いと感じていました。けれど、子どもの頃に浴び続けていた人権教育のぬくもりを、今回は拡げる立場として参加したこの研究大会は、とても意義深い経験となりました」と話してくださった若い司会者がいました。その中にあった「大事なしんどさ」という言葉の中に、今後も「差別の実態から深く学ぶ」実践が創造される研究大会の未来がみえたような気がして、深く私の心にも残りました。

司会者のみなさんも報告者と同じかそれ以上、大会当日まで気をもみながら過ごされたことと思います。縁の下の力持ちとして分科会を支えてくださった司会者のみなさんに、改めて感謝を申し上げます。

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