2010年度 あいどるとおく

 

3月号 「ネット社会」と「無縁社会

エジプトで約 30 年に及 ぶ独裁体制が崩壊しまし た。   「生まれる前から同じ 大統領。政府に不正が横 行し、自由にものが言え ず、同世代には失業者が あふれている。そんな若 者たちの怒りが一つの大 きなエネルギーとして結 集され、今回の動きにつ ながった。彼らはイン ターネットや衛星テレ ビ、携帯電話などの新し い通信手段で情報を手に入れ、デモを呼びかけ集 まった」と報道されてい ます。まさに、ICT(情 報通信技術)時代ならで はの出来事だなあと驚き ました。   ところで、そうしたこ とがもし身近で起こった として、自分はそこにつ ながっていけるだろうか と少し不安な私。イン ターネットやメールは何 とか使えているものの、 携帯電話はほとんど通話 専用。子どもがケータイ で電車の時刻を調べてい るのを見てほとほと感心 しながら、「いろんな機 能はいらんから安くなら んかな」と思う始末。   そんなネット全盛の 中、日本では高齢者の所 在がわからないという事 態が全国各地で相次ぎま した。政府の「高齢社会 白書」は、「一人暮らし や健康状態がよくない 者、未婚や離別した者、 暮らし向きの苦しい者 は、日頃の会話が少なく、 友人・近隣との付き合い が少なく、困ったときに 頼れる人がいない者が多 い」と指摘しています。 まわりに人がいるにもか かわらずつながりが存在 しない、まさに「無縁化」 が進んでいます。   その一方、子どもたち はケータイを欲しがりま す。それは、つながりを 求めていることの裏返 しと映ります。ところ が、時としてうまく使え ず、つながりを壊してし まうことも少なくありま せん。さらに、ネットの 世界をのぞくと、確信犯 的にそうしたことを行っ ている人がいたりもしま す。   いかに手段があろうと も、つながるのは機械で なく、それを作り出した 人間であるということ を、私たちはもう一度真 剣に考えなければなりま せん。人と人との確かな つながりこそが未来をよ り豊かに拓いてくれると いうことを……。   三月三日を前に、もう 一度あの文章を読みかえ そうと思います。   人の世に熱あれ   人間に光あれ