2021年度 あいどるとおく

 

6月号 「保護者の思い

 本来ならば4月には学校で定期の家庭訪問があります。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、昨年度も今年度も定期の家庭訪問が中止の学校もあったことでしょう。年度始めに保護者と、「子どもを中心に据えて」話をする機会がないというのは寂しいものです。
 6年生のAを担任していた時のことです。Aの家庭はきょうだいが多く、Aは歳の離れた末っ子だったので、可愛がられていました。Aは文章を読んだり、理解したりするのを苦手にしており、保護者の願いもあったため、中学校からは特別支援学級に入級する予定でした。そのため、学習の様子を話したり、お父さんが病気で長期入院し、経済的にも厳しい状況だったので就学援助のことを話したりとよく家に通っていました。お母さんは、「ほんま勉強できへんでな~。ゲームばっかりやし。反抗もするし。でも私が喘息持ちで、よくしんどくなるから手伝いはしてくれんねん。」と笑いながら話をしてくれていました。通い続けていると、「こんな道へ進んでほしいねん。まあAが決めることやねんけどな。」と入級や進路に対する思い、家族のことも話してくれるようになりました。
 その話の中でお父さんが韓国・朝鮮にルーツをもっているということを話してくれました。さらに、Aが生まれるずっと前に家族で住んでいたところが、自分の実家近くだったということも分かりました。すごく親近感が湧き話も盛り上がりましたが、お母さんが「そこ、在日の人何人か住んでたで。周りからはあんまりいい話聞かへんけどな。」と教えてくれました。自分の身近なところでの話でもありましたし、『差別の現実』を知った瞬間でした。
 Aだけでなく、子どもの家に通い続けると学校では見せない姿や、保護者の思いを知ることができました。すると、子どもに声をかける時にフッと家の様子が頭に浮かんできて、かける言葉も変わってきました。
 Aが卒業した後、「他の子らに使ってあげて」ときれいになった制服と体育館シューズを寄付してくれました。そのあったかい気持ちとたくましいお母さんの姿は今も自分の糧になっています。